その10 バックベアード
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水木しげるの名作マンガ「ゲゲゲの鬼太郎」には、さまざまな妖怪が出てきますが、中でも、このバックベアードという外国妖怪は、一度
見たら忘れられないほどのインパクトを持っています。
バックベアードは、アメリカ出身の妖怪で、「ゲゲゲの鬼太郎」では、主に鬼太郎と対立する悪い妖怪として登場します。しかも、欧米妖怪のリーダーという
偉大な役回りです。原作マンガでの出演はけっこう多いのですが、「ゲゲゲの鬼太郎」のアニメ化の際は、それらのエピソードが起用されず、テレビではあまり
見かけないのが、やや残念です。
巨大な目玉という姿は、悪の親玉らしい貫録を感じさせますが、この一つ目は、相手に目まいや催眠状態をもたらす超能力があり、オカルト用語で言うところ
の「邪眼」そのものだったりします。
いかにも、ありえそうな設定のバックベアードなのですが、最近の「ゲゲゲの鬼太郎」研究では、意外な真実が分かってきました。いくら探してみても、他所
では、バックベアードと言う名前のアメリカ妖怪は見つからないらしいのです。どうやら、水木しげるによる完全な創作妖怪だったと言われ始めている次第なの
です。よく考えたら、水木しげる作品でも、「ゲゲゲの鬼太郎」以外では、バックベアードはまるで見かけません。「変身忍者嵐」や「超神ビビューン」などの
特撮ヒーローものには、いちおう、バックベアードと言う妖怪は出てきますが、これらの番組の妖怪出典はかなり怪しく、恐らく「ゲゲゲの鬼太郎」からのスピ
ンオフだったのではないかと考えられます。(アニメの「ゲゲゲの鬼太郎」と「変身忍者嵐」、「超神ビビューン」は、いずれも同じ東映作品)
このように、伝統的な正規妖怪と見なすにはストップがかかったバックベアードですが、「ゲゲゲの鬼太郎」を通しての知名度が高いせいか、最近では、「悪
魔城ドラキュラ」のような人気TVゲーム作品の敵キャラにすら採用されています。
私も、このバックベアードという妖怪は妙に気に入っていて、幼い頃から、自分の書いたマンガや小説によく出演させていただけに、今ごろになって、後世の
創作妖怪だったと考えるのは、かなり辛い部分もあります。そこで、本当にバックベアードは完全な水木しげる個人の創作物なのかどうか、さまざまな妖怪情報
に基づいて、再検証してみたいと思います。今回の付録文献である「幻の鬼太郎妖怪のルーツを求めて」は、そんな訳で、まず筆頭として、バックベアードの謎
を掘り下げてゆきますが、他にも、水木しげる作品に出てきたルーツの怪しい妖怪について、いろいろ探っていく事にします。