第11話「まぼろしの大公」  
NEO FREEMEN  

 

      ○フリーメン・アジト

   どんよりと薄暗い、不気味な場所。
   その中央に、タナトスが一人で立っていて、うつむき加減に、微笑んでいる。
タナトス(嬉しそうに)今や、フリーメンの中に、私と並ぶ有力者はいない。
       ついに、私が、この組織の全実権を握ったのだ

   タナトスが高笑いを始めた時。

魔人の声何かの冗談ですか
   その声にギクッとしたタナトスが、声のした方向に目を向ける。
   そこには、白衣を着た中年男、魔人が立っている。
   飄々とした感じで、一目で科学者だと分かる人物である。

タナトス(魔人へ)誰だね?君は
魔人(さらりと)私の名前は、魔人。フリーメンの最高委員会の一人です
タナトス(眉をひそめ)聞かない名前だな。私に用でも?
魔人どうも、まだ何も知らされてないご様子みたいですね。
     フリーメンの最高会議では、この度、新しい方針が打ち出されたのです。
    以後、フリーメンは、全て、この方針に基づいて、行動をとらせていただきます。
      あなたが指揮していたハデス計画は、今回の会議で廃止が決定しました。
     あなたは、もうフリーメンには用済みなのです

タナトス(動揺して)何を言う?私は、フリーメンの最重要人物のはずだぞ!
       その私抜きで、どこで最高会議が開かれたのだ?
         それに、ハデス計画無しで、環境破壊から人類をどう救うつもりだ?

魔人気の毒ですが、フリーメンの体制は、全て、変わったのです。
    あなたたちとは別に、
      環境破壊の悪化をギリギリで回避しようと言う方向での人類救済計画も
          極秘に進められていたのです。
     そして、この度、データが揃い、そちらの計画が最優先される事となりました。
       その他の計画は、もう不要どころか、邪魔な金喰い虫でしかないのです。
    今頃、ヨーロッパでアガルタ計画を進めていたラストーロ研究団にも
        中止勧告が出されているはずでしょう

タナトス(わめく)お、横暴だ!そんな勝手な事を誰が決めた?
      なぜ、担当者の我々に、何一つ、相談が無い?

魔人(冷たく笑い)本当に何も聞かされてないみたいですね。
     でも、ウロコと言う名前でしたら、ご存知なのではありませんか

タナトス(ギョッとして)ウロコ?まさか!その名前は、ただの噂のはずだぞ。
         フリーメン内に、そんな大物実力者は実在なんかしていないはずだ

   妖しい笑みを浮かべる魔人の横に、一人の人間がスッと影のように現われる。
   ベレー帽をかぶった美形の青年、宇呂子である。無表情で、喋ろうとはしない。
   宇呂子の姿を見て、タナトスはがく然とした表情になる。
タナトス(つぶやき)まさか。
       まぼろしの大公の話は、 フリーメン発祥の時からあったと聞いているが・・

   魔人は、勝ち誇った表情になる。
魔人(あざ笑いながら)これまでの筆頭責任者たちが、見苦しい権力争いを続けてきたせいで、
       栄光あるフリーメンは、イラク戦争さえ防げないほどに弱体化してしまいました。
     でも、これからのフリーメンは、偉大なる宇呂子さま中心に新たによみがえるのです。
      世界は全て変わります。
      人類の未来は永遠のものとなるのです

   楽しげに語る魔人の前で、タナトスはぼう然としている。

   タイトル「第11話 まぼろしの大公」


      ○国会議事堂・議事堂内  (昼間)

   会議が始まるところで、議員たちで席は埋まっている。

   議長席に、すっと宇呂子と魔人が姿を現わす。
   彼らの後ろには、警備服姿の宇呂子秘密警察員(USP)がズラリと並んでおり、
   そのうちの一人は、フェニックスの絵柄がついた旗を掲げている。
魔人(マイクを通し)この国の政治は、本日付をもって、我々黒蛇党が担当いたします。
     新たな首相は、こちらにいらっしゃる宇呂子さまで、
         政策は全てマザーコンピューターが決定します

   議員たちの間に、ざわめきがあがる。
魔人(力強く)落ち着きなさい。これは、この国だけの話ではないのです。
      これからは、世界の全ての国家が、同じ方針で運営されてゆきます。
        環境破壊の脅威は、
     全人類が等しく省エネを実行すれば、かろうじて乗り越えれる事が分かりました。
    だから、今は、個々の利害は捨て、
      優れたコンピューターの的確な計算のもと、
         皆が一丸となって、協力しあわなくてはいけないのです

   議員たちのざわめきがおさまり始める。

魔人(妖しく微笑み)ただし、その為には、障害になる連中も存在します
   魔人が目配せすると、
   背後のUSPたちがバッと走り出し、座っていた議員の一人に鋭く銃を突き付ける。

魔人(大声で)射殺せよ!
   再び、議員たちがざわめく中、銃を向けられた議員が、慌てて、走り逃げ出す。
   その後ろ姿に、USPは発砲するが、
   その瞬間、その議員は、バッとハエの野民に化身して、空中へと飛び上がる!
   しかし、何も動揺していないUSPは、空を舞うハエ野民にも銃撃を続け、
   あっさりと撃ち落としてしまう。
   床の上に、ハエ野民の死骸が横たわる。

   この異常事態に、議員たちは、さらにどよめく。
魔人(大声で)見ましたか!
     このような怪物が、これまで、我々の間には、沢山混ざっていたのです!
    愚かな科学者がいて、
      その人物は、このような怪物を作って、人類と入れ変えようとしていたのです。
     こんな恐ろしい計画には断固として立ち向かわなくてはいけません!
       このような化け物を全て根絶やしにするのです!


      ○どこかの街・路地  (昼間)

   普通の通行人もいる中、一匹のゴキブリの野民が走り逃げている。
   その後ろを、USPの一群が追い掛けている。
   行き止まりにまで追い詰められて、ゴキブリの野民が立ち止まったところで、
   USPは発砲し、ゴキブリの野民を蜂の巣にして、殺してしまう。


      ○森林地帯・上空  (昼間)

   カラスの野民が、逃げるように飛んでいる。
   事実、後ろからは、USPが乗ったヘリコプターが追跡をしていて、
   時々、機銃で攻撃している。


      ○どこかの街・下水道内

   USPの追跡班が、声を掛けあいながら、走り回っている。
   彼らに見つからないように、ネズミの野民が、脅えながら、壁の影に隠れている。


      ○どこかの街・大通り  (昼間)

   沢山の人が歩いている中、
   リュックを背負い、ノートパソコンを手に持った影子も、さりげなく歩いている。
   リュックのすき間から、中にいる動物の目がキョロキョロ動いているのが見える。
   実は、影子は、リュックの中にバルを隠して、連れ歩いているのである。

   高層ビルの壁に設置された巨大なテレビスクリーンでニュースをやっている。
ニュースキャスター(テレビ画面内で)政府の新方針により、駆除された野民の数は、
       我が国だけでも、すでに百匹を超えました。
     政府は、野民の絶滅も間もなくであろうと言う正式見解を発表しました

   影子は、嫌そうな表情で、そのニュースを聞いている。

   その時、影子の前に、ニコニコした青年、戸燈がバッと立ちふさがる。
戸燈(影子へ)あなた、影子さんでしょう!
     ほら、そうだ!わーい、やっぱり、本当にいたんだ。
       すごいなあ、感激しちゃうな

影子(戸惑いながら)あなた、誰?
戸燈(名刺を差し出しながら)おっと、ごめんなさい。
     私、SCUM放送局の専属レポーターで、戸燈と言います。
    あなたの事をずっと探してたんですよ。
      あなたこそは、日本のモスマンなんです

影子モスマン?
戸燈ご自分も蛾の野民でありながら、
      恐るべき野民の駆除に協力していると言う、都市伝説的存在。
    実際にいたからには、あなたの事を、ぜひ、取材させてください!
       テレビのドキュメンタリーにして、その偉業を全国に紹介したいんです!

影子(慌てて)待ってよ!何の話?私、知らないわ!

   そこで、戸燈の横に、スッと魔人が姿を現わす。
魔人(ほくそ笑み)隠さなくてもいいのですよ、影子さん。
      彼に情報を流したのは私です。決して、悪い話ではないんですけどね

影子(警戒気味に)あなたは・・
魔人(意味あり気に)まあ、こんな道端で立ち話もなんです。場所を移しませんか

       (CM)


後編へ続く