最終話「終わりの始まり」  
END IS BIGINNING  

 

      ○宇呂子邸・裏庭  (夜)

   前話ラストシーンの続き。
   宇呂子邸すぐ裏の大きな湖。
   そこから、水柱を立てて現れた巨大な光球が、
   影子の目の前で、ぐんぐんと空に上昇し、かなたへ飛び立ってゆく。
   その光の玉が去ってゆくのを、影子はぼうぜんと眺めている。
   そして、影子の背後では、
   鈍い音を響かせ、大量のほこりを巻き上げて、宇呂子の豪邸が崩れ落ちてゆく。

   タイトル「最終話 終わりの始まり」


      ○宇呂子邸跡  (夜明け)

   殺し合いの一夜も過ぎ、
   東の地平線からは太陽の光も射しかけ、周囲も肉眼で見える程度に明るくなっている。
   ただし、あの巨大な宇呂子邸自体は完全に崩壊してしまい、
   一面が瓦礫の山と化している。

   その中に、唯一の生き残りである影子が一人超然と立ち尽くしている。
影子(がく然と)皆、死んでしまった。
      こんな未来、誰も望んでなかったはずなのに。
    なぜ、こんな事になってしまったの?

   その時、もう一つの小さな人影が現われ、ゆっくりと影子の方へと近づいてくる。
   もう一人の生き残り、アヤである。
   アヤは、影子以上にうろたえている。
アヤ(泣きながら)パパも下子さんも探偵さんもどこにも居ない。
     アヤ、独りぼっちになっちゃった。
      これから、どうすればいいの

   影子とアヤの視線があう。アヤは、すがるような目で影子を見つめる。
アヤ(怯えながら)アヤ一人じゃ生きていけない。 誰か、アヤを助けて。
      おねーちゃん、お願い

   逆に、影子はクールにアヤを見下している。
影子(厳しく)助けてですって?世の中は甘くないのよ。
     面倒をみてあげる代わり、あなたは私に何をしてくれる?
      あなたみたいな足手まといの子供に何ができると言うの?

アヤ(戸惑いながら)アヤにできる事は・・・アヤは・・・
         おねーちゃんの事をいっぱい愛してあげる。
      だから、アヤも一緒に連れてって

   アヤの返答を聞いた影子がドライに大声で笑いだす。
影子(冷たく)エコは命をかけて守ってあげると言うのに、
         その代償は愛してくれるだけですって。
      それがあなたにできる精一杯のお返しなのね

   影子の態度を見て、アヤもどうしたらいいか困って、立ちすくんでいる。

   その時、ヘリコプターの爆音が聞こえてくる。
   影子とアヤが上を見上げると、大型の軍用ヘリが接近してきており、
   そのヘリは二人のすぐそばにと着陸する。
   影子とアヤは逃げようともせず、成り行きに身を任せている。

   着地したヘリから、白衣を着た外人の青年、ゴーシュが降りてくる。
   ゴーシュは、すました表情でつかつかと影子のそばへと歩み寄る。
ゴーシュ(影子へ)あなたが、間野影子さんですね。
      はじめまして。
     私はロシア科学局より派遣された科学者で、ゴーシュと言います

影子(平然と)ロシア科学局?
     世界的重要人物、宇呂子を暗殺しようとした件で、
        エコを捕まえにきたのと違うのかしら

ゴーシュご安心ください。私はあなたの味方です。
      逮捕ではなく、保護に来たのです

影子どう言う風の吹き回しかしら。
    宇呂子について言えば、悪いけど、エコは殺しちゃいないわ。
   彼の正体は、ただの人形だったのよ。
     何かとてつもない存在が念力か何かで遠くから操っていたのね

ゴーシュ存じてます。とりあえず、私についてきていただけないでしょうか
影子(あっさり)分かったわ

   どこかに隠れていたらしきバルがばっと飛んできて、影子の肩に止まる。
   取り残されたアヤだけがうろたえているが、
   彼女へも影子が目で合図を送ってくれる。
   安心したアヤが、こそこそと影子の方へと走り寄る。
   影子、ゴーシュ、アヤ、バルが乗り込むと、ヘリはすぐに離陸し、
   再び空へと飛び去ってゆく。   (FO)


      ○ロシア科学局・廊下  (夜)

   大きな建物内らしく、小ぎれいな廊下が前後に長く続いている。
   科学局なのに、警備の兵隊があちこちに立って、番をしている。

      ○ロシア科学局・個室  (夜)

   寝室を兼ねており、隅にベッドがある。
   明かりは消されており、
   ベッドの上では、疲れきったアヤとバルがお互いを抱きあって、
   安心してグッスリと眠っている。

      ○ロシア科学局・会議室  (夜)

   狭い部屋で、明かりも暗くして、
   影子とゴーシュ二人っきりで向きあって、落ち着いて話をしている。

ゴーシュ(淡々と)全ての話の始まりは、1908年にまでさかのぼります。
     この年、我が国ロシアのツングース地方へ、一つのミニ彗星が落下して、
        世界に衝撃を与えました。
    これが現在、ツングースの大爆発と呼ばれている天体クラス大事件です。
       ところが、この時、地球に落ちてきたのは彗星だけではなかったのです

   影子は、ゴーシュの話を、興味深げに、静かに聞いている。

ゴーシュこの彗星に乗って、一匹の宇宙生物も地球に飛来しました。
     人智をはるかに超えた、この超生命体は、
       当時の戦争に明け暮れる地球人の姿を見て、激しく哀れみ、
      地球人を導くべく、自らをキリストブトマスと名付け、
        地球にとどまる事にしました。
    彼が結成した組織こそフリーメンだったのです

影子(怪訝そうに)なぜ、あなたがそんな話を知っているの?
ゴーシュフリーメンの秘密会員は、皆、
      ブトマスから与えられたという教典、シオンの聖典を持っています。
    その中に、フリーメンの真実やブトマスの指令などが全て書かれていたのです。
       私たちは、その奪取に成功したのです

影子なるほど

ゴーシュさて、問題のブトマスですが、この怪生物は水中に棲む性癖があり、
     実は、7年前、日本の赤面山へと移動してからは、
       ずっと宇呂子邸の裏にある湖に潜んでました。
    それが、先ほど、また移動を行ない、ツングースへ戻った事が確認されました

影子(ハッとして)7年前の赤面山ですって!
   影子の脳裏にまた、家族旅行中の事故のイメージが思い浮かぶ。
影子(つぶやく)じゃあ、あの光の玉がブトマスだったんだわ。なんて事・・・

ゴーシュ世界連合は、
     この100年間、各国を踏みにじってきたフリーメンと決別し、
       戦う決意を固めました。
    ツングースには、フリーメンがブトマスを祀っている疑似古代神殿があります。
    オペレーションブトマスと呼び、私たちはそこへ総攻撃をしかける予定です。
      影子さんも協力してくれますね

影子相手がフリーメンなら、たとえ、それが身内でも戦うだけの決心はできてる?
ゴーシュ(真剣に)もちろんです
   影子が、嬉しそうに、静かにうなずく。


      ○ツングース古代神殿・参謀室

   フリーメンのマークが大きく壁に刻まれた、広くて薄暗い部屋に、
   アイマスクをつけた長髪の美女、シオンの聖女と、
   仮面とガウンで体全体を覆った魔人が、
   ひっそりとくつろいでいる。

魔人情報によると、影子がここに来るみたいですね
シオンの聖女(冷ややかに)親愛なる同志よ。
       全ては、宇呂子の秘密を隠し切れなかったあなたの責任です。
         忘れてませんね

魔人シオンの聖女、分かってます。彼女の事は任せておきなさい

   魔人は、不愉快そうに、この部屋から出てゆく。
   残されたシオンの聖女は、
   ボケットから、液体の入ったガラスの小瓶を取り出すと、
   それを見ながら、妖しく微笑む。   (FO)


      ○ツングース・平地  (昼)

   地面一帯に、世界連合の軍隊が陣取っており、
   遠方の地平線には石造りの巨大な建物、ツングース古代神殿の姿が見える。

   空より、爆音を立てて、軍用ヘリが飛んでくる。
   ヘリは、軍の司令部テントのそばへと着地する。
   ヘリの中からは、ゴーシュ、影子、アヤ、バルが降りてきて、司令部の方へと向かう。
   影子は、片手にノートパソコンを持っている。

ゴーシュ(影子たちへ)あれが、ブトマスの古代神殿です。
     ロシア軍部にもフリーメンのメンバーがいた事が発覚し、
      その女将校は自分の配下の軍を引き連れると、
        ブトマス親衛隊と称して、反乱を始めました。
     彼女たちは、あの神殿の中にたてこもっています

影子(落ち着いて)戦況は?
ゴーシュ各地の敵軍は一掃できました。あの本拠地の陥落も間近です

   その時、一人の兵士が慌てて司令部へ駆け込んでくる。
兵士(動揺しながら)大変です。
     敵軍は、神殿内に怪しい毒ガスを放出した模様です。
    神殿内に侵入した我が軍兵士は、皆、急に体が粉になって、死んでしまいます。
      これでは、神殿への突入及び制圧が不可能です

影子(ハッとして)”霧”だわ。まだ、そんなものが
ゴーシュ追い詰められた敵軍の奥の手か。
     ミサイル攻撃で神殿を破壊すれば、そのガスが外部に溢れ出るかもしれないし、
       今もたもたしていたら、またブトマスに逃げられるだろう

影子(一歩前に出て)私が神殿に入ります。そのガスは野民には効きません
ゴーシュ(きょとんと)大丈夫ですか
影子(きりっと)自分の戦いは、自分でけりをつけます

   アヤが心配そうに影子の方を見ている。
   そんなアヤに影子は優しい目を向け、手招きして自分のそばへ寄らせると、
   強く抱きしめてあげる。
   そして、アヤを下がらすと、今度はバルの方へ顔を向ける。
影子(元気に)さあ、バル。あなたも一緒に行くわよ!
   空を舞うバルを連れた影子は、古代神殿の方むかって、さっそうと歩き出す。

       (CM)


後編へ続く