第4話「野民の王」  
THE PRINCE OF THE DARKNESS  

 

      ○町中  (夜)

   新年を迎えたばかりの真冬。
   路上には降り積もった雪が散在し、
   その上を、厚着をした市民らが寒そうに闊歩している。
   誰もが、やや浮かれ気味で、楽しそうに見える。
   高層ビルのネオンに、「21世紀到来おめでとう!」の文字が浮かび上がる。

   そんな中を、分厚いジャンパーを着たスキンヘッドの大男・永山も歩いている。
   永山は、周囲の様子を不愉快げな表情で睨んでいる。


      ○郊外の森  (同)

   いきなり、カラスの野民・ガラズーンの顔のアップ。
   ガラズーンは、引き裂くような鳴き声で叫ぶ。

   タイトル「第4話 野民の王」

   暗い森の中、木々の間をくぐり抜けて、影子が逃げ走っている。
   上空では、ガラズーンが飛行して、影子の事を追い掛け回している。

ナレーション人間の遺伝子ヒトゲノムの中には、
     進化の途中で発達が止まってしまい、
       未使用となった細胞情報が大量に含まれている。
    闇十字団のドクタータナトスが開発した薬品”霧”は、
     そうした細胞情報を再活発化させる作用があり、
       人間を他の生命力の強い動物とのあいのこである野民にと
            強制進化させてしまえるのだ。
    こうして生まれた沢山の野民たちは、
      今では、研究所内に収容しきれず、
        研究所の外のあちこちへと放たれ、
          
闇の世界に紛れて、暮らしているのである

   ガラズーンは、影子を追跡し続ける。
   逃げ惑う影子は、ドクガールに化身する兆しを見せない。
   もし、化身しても、空中戦では、
   優雅に飛ぶガラズーンに対抗できない事が分かっているからである。

   影子は、木々の生えてない原っぱへと走り着く。
   その先には、小さな湖がある。
   影子は、急いで、その中へ飛び込み、潜り入ってしまう。

   寸でのところまで追い詰めていたガラズーンは、
   ここで停止し、たじろいでしまう。
   翼が濡れるので、水の中には入れなかったのである。
   弱り果てたガラズーンは、湖の上を、うろうろと旋回した末、
   諦めて、いずこかへと飛び去ってしまう。

   しばらくして、ずぶ濡れの影子が湖の中から上がってくる。
   水が冷たかったせいもあるかもしれないが、その表情は険しい。
影子(つぶやき)武器・・・なにか、強力な武器が必要だわ


      ○防衛庁・長官室

   窓際の机に、貫録のある長官が、どっしりと座っている。
   そこへ、ドアをノックして、永山が入ってくる。
永山(敬礼して)失礼します
長官お、来たか。話とは何かね、永山二佐
永山(長官の元へ歩み寄り)ハッ。とても重要な話であります。
     我が国の未来にも関わる問題かもしれません

長官(少し驚き)ほう。それは、たいそうな

永山まずは、これを見て下さい
   永山は、長官の机の上に、沢山の写真を並べる。
   それらには、町中や野外の隅にたたずむ野民の姿がぼんやりと写されている。
長官これは、一体?
永山最初は、五徳市の閉鎖に立ちあった部下が、
     現地観察用に撮った写真の中に偶然写っていたのを見つけたのが、
       きっかけでありました。
    しかし、調査を進めてゆくうち、このような異形のものが、
      実は、各地に隠れ潜んでいるらしい事が判明したのであります。
   実物も、すでに何匹か、しとめました。本物の化け物です

長官まさか。何かの間違いではないのかね

永山いずれ、正式な報告書は提出いたします。
     このような連中が、なぜ、出現し始めたのかは分かりません。
   しかし、昨年末から、その活動がやたらと顕著になり始めているみたいなのです。
     考えてもみてください。
    我々の知らないところで、こんな生物たちが暗躍をしているのです。
       恐ろしいとは思いませんか。
    軍としては、すぐにでも手を打つべきであります。
     この生物たちの生態を調べ上げ、国民が危害を受ける前に、根絶するのです。
   それが、我々の為すべき任務であります

長官信じられん・・・

永山自分の申請、検討してくださいますね
長官しかし、君。これらの謎の生物を探し出す方法とかはあるのかね。
     闇雲に探し回っても、効果は見込めないはずだ

永山その点については、心当たりがございます

   永山は、写真の中から、数枚を抜き出す。
   それらには、影子の姿が隠し撮りされている。
永山謎の生物の目撃報告が多い場所では、
      なぜか、この女性の姿もよく目撃されています。
    恐らく、何らかの関わりがあるのではないかと

長官(微笑み)なんだ、普通の少女じゃないか。
    この写真に比べると、こちらのは妙に痩せているね。
      数カ月かけて、ダイエットでもしたのかな

永山その写真は、三日違いで写したものであります
長官(ギョッとする)バカな。三日で、こんなに変わるはずが・・・。
      まさか、この子も化け物の一人だと?

永山分かりません。
    しかし、捕らえてみれば、全ての真相は分かるはずでしょう

長官(狼狽しつつ)永山くん、貴重な話をありがとう。
      よく検討するよ。良い返事を期待していておくれ

永山ありがとうございます
   永山はビシッと敬礼して、部屋から出てゆく。

   すると、入れ違いに、部屋の奥に隠れていたひさおが、影のように姿を現わす。
長官間野くん。確かに、君の懸念していた通りだったよ。
    少しづつだが、秘密に勘づき出した者が現れたらしい

ひさお(妖しい笑み)あの男、危険だわ。排除して


      ○牧村宅・玄関前  (昼)

   元気そうなアヤが、リュックを背負い、はしゃぎながら、
   門の周りを行き来している。

   その様子を、玄関の入口のところに立った牧村と下子が眺めている。
   牧村は白衣だが、下子は外出着である。
下子(牧村へ)アヤさん、すっかり良くなったみたいですね
牧村う・・ん。
    まさか、あの少女の涙が、傷口だけではなく、
     アヤの血液病に対してまで、治癒効果を見せるとは、意外だったよ。
    アヤが、これほどまでにも回復してしまうとは

下子しかし、ほんとに良かったんですか。
    アヤさんを旅に出すのを許可しても。
   いくら病気が治ったとは言っても、
     アヤさんの年齢で当てもない旅行は、あまりにも無謀すぎます。
   あの女の人、影子さんを探して、ここに連れ戻したい、だなんて、
       ムチャすぎる考えですよ

牧村確かにそうだ。
    でもね、今まで、私は病気を理由に、
      アヤには何の自由も与えてはこなかった。
   せめて、この程度の我がままを聞き入れてやるのは、親としての務めだよ。
     それに、私も、影子さんとは、あらためて会いたい気がする

   牧村が、そっと影子の写っている写真を出し、眺める。
牧村(つぶやき)それにしても、この子が、
      あの政財界の華、間野ひさお夫人の娘だったとは。
   五徳市の災害で死んだと聞いていたのだが

   その時、はしゃぎ遊んでいたアヤが、二人のもとへ駆け寄ってくる。
下子(アヤへ)さあ、アヤさん。そろそろ出かけますよ
アヤ(素直に)はーい
牧村(下子へ)じゃあ、下子くん、アヤの事を頼んだよ。
     困ったら、すぐ連絡をおくれ

下子はい。先生も、しばらく一人にしてしまいますが、お元気で
アヤ(明るく)パパ。絶対、おねーちゃんを見つけてくるからね!
   牧村に見送られ、アヤと下子は門から外へ出てゆく。

      ○路地  (同)

   塀に左右を囲まれた一本道。アヤと下子が歩いている。
   その後ろを、電柱に隠れながら、こそこそと球異が追い掛けている。

   下子が、ふとピタリと止まる。
下子(振り返り)おい、探偵!出てこいよ。居るのは、バレバレなんだぞ
   電柱の影で、球異がビクリとする。
下子あんたの探し人も、あのお嬢さんで、
     見失っちゃったから、オレたちの事を付け回してるんだろ。
    目的は同じなんだ。
      今までのいきさつは忘れてやるから、一緒に探そうぜ。
    そうやって、隠れていられると、気になって、しょうがない

   球異が、オロオロと電柱の後ろから現れ、下子たちのそばへ歩み寄る。
球異(おたおたと)いいえ。
     おいらは、探偵などではなく、通りすがりの旅人でして・・

下子いいから、行くぞ!
   球異も加わって、三人は、再び道を歩き出す。   (FO)


      ○岩場  (真昼)

   まぶしく太陽が照っている。
   岩だらけの場所で、探検服スタイルの老人・西森が、
   かなてこでしきりに岩壁を叩いている。

   他に人は居なかったが、
   そこへ、バルを連れた影子がひょっこりと現れる。
   影子は立ち止まり、冷めた様子で、西森の作業に目を向ける。
影子何をしてるんですか
西森(作業しながら)古代の遺跡の発掘じゃ。分からんかね
影子この土地に、そのようなものがあると言う噂は聞きませんが
西森わしの勘で、ここを調べているのだ。かまわんでおくれ

   うるさげな西森が、影子の方へと顔を向ける。
   奇怪なバルにも目をやるが、気にせず、再び作業に戻ってしまう。
影子この動物を見て、何とも思わないんですか
西森わしは、世界中を旅してきた。世の中には、変った生き物が沢山いる。
    
いちいち驚くには値しない
   西森の返事に対して、影子はにっこりと微笑む。

       (CM)


後編へ続く