第5話「オニヒトデ」  
SEA MONSTER  

 

      ○研究所内

   闇十字団の研究所・秘密工場内。そこそこに広い。

   機嫌良く視察し回っているタナトスの目の前で、
   オートメーションの機械が”霧”の原液を次々に調合している。
   その配合過程にて、粗悪判定された原液は、
   廃液として、下水パイプの方へ送られている。
   下水パイプはぐんぐん伸び、屋外へつながっている。

      ○河

   下水口から、”霧”原液がジャバジャバと、河の中に流されている。
   鈍い色の原液は、水面に広がり、沈殿し、下流へと流れてゆく。

      ○海

   河から流れてきた”霧”原液は、広い海の表面にすら漂っている。

   やがて、海中に怪しい物陰が動き出す。
   それは、浜辺の方へと向かい、波に紛れて、砂浜へと上陸する。
   ヒトデ状の頭を持った野民・オニヒトデビトの出現である。

ナレーション人間の遺伝子ヒトゲノムの中には、
     進化の途中で発達が止まってしまい、
       未使用となった細胞情報が大量に含まれている。
    闇十字団のドクタータナトスが開発した薬品”霧”は、
     そうした細胞情報を再活発化させる作用があり、
       人間を他の生命力の強い動物とのあいのこである野民にと
            強制進化させてしまえるのだ。
    こうして生まれた沢山の野民たちは、
      今では、研究所内に収容しきれず、
        研究所の外のあちこちへと放たれ、
          
闇の世界に紛れて、暮らしているのである

   タイトル「第5話 オニヒトデ」


      ○フリーメン・アジト

   どんよりと薄暗い、不気味な場所。

   側近たちに囲まれたひさおとタナトスが、
   線(影子の移動ルート)の引かれた地図を見ながら、会話をしている。
タナトス(地図を杖で指しながら)見たまえ。これが、影子くんの今までの逃走ルートだ。
       私も、全国に散らばる野民たちには影子捕獲命令を出している。
         まあ、捕まるのも時間の問題だろう

ひさおさあ、当てにして良いのやら。
     私は、とりあえず、プリンスと接触してみるわ。
       せいぜい期待できる野民は、彼ぐらいなものですから

タナトス(冷ややかに)それもよかろう

ひさお(地図を見ながら)しかし、影子ったら、何か目的でもあるのかしら
   ひさおは、地図の線の先を目で追ってみる。
ひさお(ハッとして)まさか・・・


      ○どこかの浜辺  (昼)

   まだ遊泳禁止の季節なので、人影は何も無い。

   ただ一人、バルを連れた影子が、テトラポットの上に座って、休憩している。
   地図を開き、周囲を見渡しながら、方向を確認している。
影子(バルへ微笑みかけ)よし、バル。そろそろ行くわよ


      ○鬼頭村・近郊  (同)

   浜辺を、アヤ、下子、球異の三人が歩いている。
   海を見れて、嬉しいのか、アヤは浮かれはしゃいでいる。

アヤ(球異へ)ねえねえ、探偵さん。今度こそ、本当におねーちゃんに会えるの?
球異もちろん。おいらの推理に間違いはありません!
     影子ちゃんは、次に行く鬼頭村に必ず顔を出すはずです。
       だから、先回りして、待ち伏せするんです

下子(苦笑いして)おい、影子ちゃんって、馴れ馴れしいぞ、ヘボ探偵。
     で、それって、根拠のある話なのかよ

球異ヘボは余計ですよ。これまでの影子ちゃんの動向から推測したんです。
    彼女は、これまで、食糧調達や資金稼ぎの為、あちこちの町や村に顔を出しています。
      今までの彼女の移動ルートをたどると、
     今度、現れる場所が鬼頭村だと言うのは、ほぼ確実です

下子それで、その鬼頭村には、まだ着かないのか
球異(目の前を指さし)ほら、もうそこです。
     マップによると、さびれてはいるけど、のどかな漁村みたいですよ

   目前には、点在する民家が見えてくる。
球異田舎だから、きっと、人のいい連中ばかりですよ
   球異の言葉に、アヤが嬉しそうに微笑む。

   三人は、どんどん村の方へ近づいてゆく。
   すると、村の方から
   「よそものだぞー!
   「女もいるぞー!
   と言う大声が聞こえてくる。

   不安になった三人の前に、まもなく、村民たちがゾロゾロと駆け寄ってくる。
   手には棒やモリを持ち、殺気だっていて、かなり物騒な雰囲気である。
   村民たちに囲まれ、下子たちは、うろたえて、立ち止まってしまう。   (FO)


      ○小屋の中  (夜)

   何も置かれてない小さな木造の物置小屋。
   小さな裸電球一つに照らされて、
   暗い中に、下子、アヤ、球異たちが閉じ込められている。
   縛られてはいないが、アヤは怖くてベソをかき続けている。

下子(ブツブツと)何が、人のいい連中ばかりだよ。どうなってんだよ、これは
球異それは、こっちが知りたいですよ
下子アヤさん、泣かないで。絶対、助かりますからね
   アヤは、泣きながらも、けなげにうなずく。

球異そうだ!逃げ出そう!
    ほら、あそこに天窓があるでしょう。肩車をすれば、届きそうだ。
      逃げ出した人が、助けを呼びに行くんです

   球異が指さした場所には、閉まってはいるが、確かに天窓がある。

下子お前にしては、いいアイディアだな。
    それで、誰が逃げ出すんだ?もちろん、アヤさん優先だろうな

球異(慌てて)バ、バカを!こんな危険な任務、子供に押し付けられますか。
      探偵であるおいらが命を張って・・・

下子(意地悪く)とか言って、一人で逃げ出すつもりじゃないだろうな
アヤ
(たどたどしく)探偵さんに行かせてあげて
球異(勝ち誇って)ほら!アヤちゃんも、そう言ってる事だし!
   下子が不服げな表情の一方、球異はずるそうな笑みを浮かべている。

   そして、下子の肩に乗っかり、球異の脱出計画が、さっそく始まる。
   しかし、手際が悪いのか、なかなか進行せず、バタバタしている。

   その矢先、小屋の戸が開き、外から一人の女性が入ってくる。
   村の娘の令子、ちょっとセクシーな妙齢の少女である。
令子(すかさず)何やってるの、あなたたち!
     その天窓は、外からつっかいをしているから、開かないわよ

   ガクリときて、下子の肩車は崩れてしまう。
下子こうなりゃ、ヤケだ!ヘボ探偵、その娘を人質にして、強行突破だ
球異よっしゃあー!
   球異は、令子の方へ突進してゆく。
   しかし、令子の顔を見た途端、ハッとなり、赤くなって、立ち止まってしまう。
   その隙をついて、令子が逆に球異を両手で押し飛ばしてしまう。
   球異は、あっけなく床に倒されてしまう。
下子(呆れて)役に立たない探偵・・・

   令子は、入口の戸を閉め、三人の元へ歩み寄ってくる。
令子(優しく)ごめんなさい。こんなところに閉じ込めたりして。
     でも、これには、事情があったのよ。本当は、村の皆にも、悪気は無いの

   球異は、令子の方を見て、まだ赤い顔のまま、ボッとしている。

下子あなたは、一体?それに、事情って?
令子私は、令子。この村の人間よ。
     実は、この村には、ほんの数日前に、怪物が現れたの。
      その怪物が、命令を出したのよ。
    この村に訪れる、ある女性を捕まえ、自分に差し出せ、って。
      私ぐらいの年齢の少女だと言っていたわ。
     それで、村の全員が、すっかり過敏になっちゃって・・・

下子怪物?
令子そう。海から現れたの。
     ヒトデに似ていて、人間ぐらいの大きさがあったわ

下子なぜ、そんな奴の言いなりに?
令子(ためらいながら)そいつは・・・そいつは殺したのよ、村の人を!

      ○回想

   民家の中に、突然、乗り込んでくるオニヒトデ!
   その家の住人たちは、驚き怯え、全員で寄り添っている。
   彼ら目がけて、オニヒトデは、口から吐く毒液を浴びせる。
   その毒汁が体にかかった住人たちは、
   悶えながら、次々にバタバタと倒れていってしまう。

      ○小屋の中  (夜)

   先のシーンの続き。会話を続ける令子と下子たち。

令子怪物は言ったわ。
     自分は、四六時中、この村を見張っているから、
        裏切り行為をすれば、すぐ分かるって。
    もし、自分の命令に従わず、村の外へこの事をばらしたりすれば、
      村の全員を皆殺しにしてやるとも言ってたわ。
     村の全員を見張ってるだなんて、絶対ウソに決まってるのに。
       でも、皆は、すっかり怯えてしまって、言いなりになってしまったわ。
    それで、あなたたちにまで迷惑をかけてしまった。本当にごめんなさい

下子そうだったんですか

令子(アヤへ)怖かったでしょう。本当にごめんね。
     あなたみたいな小さなお嬢ちゃんが、怪物の探している女性じゃない事は、
        一目りょう然なのにね。
    皆、怖くて、何も分からなくなってしまっているのよ

   アヤは、令子の優しい態度に安心したのか、ぐずるのを止めてしまう。
令子何とかしなくちゃ。被害者が増えるばかりよ。
     怪物が探している女性の素性でも分かれば、
       彼女を事前に逃がしてあげる事もできるのに

   その時、ようやく、球異が令子の前へ歩み出る。
球異(元気に)おいら、令子ちゃんの考えに大賛成です!おいらも協力します
下子(嫌みに)何だよ、役立たずのくせに

       (CM)


後編へ続く