第7話「ギガントフラワー」  
GIGANT FLOWER  

 

      ○会議室

   小じんまりとした部屋で、窓にはカーテンを閉めて、暗くしている。
   テーブルには、政府高官らしきスーツ姿の長老たちが着席しており、
   彼らの見守る前で、移動黒板の横に立ったタナトスが喜々と熱弁をしている。

タナトス(快活に)我が闇十字機関のハデス・プロジェクトも、
       いよいよ、第二段階へと突入する事となった。
     日本政府の同志諸君、協力する事に異存は無いはずだね

   政府高官たちは、困惑した表情で、お互いの顔を見つめ合う。

タナトス(嘲笑的に)君たちは、立場を分かっていないようだな。
      いいかね。アメリカが、ペギンジンの協力要請を拒んだばかりに、
       我が組織は地下シェルターを失うという甚大な被害を受けてしまった。
     その報復として、フリーメンは、アメリカで同時多発テロを勃発させ、
          見せしめにとしてやったのだ。
       我々の命令に背く事は許されない。
    君たちのこの国ででも、同じ事をしてもいいのかな。
      炭疸菌をばらまいてほしいのかね

   政府高官たちはどよめき、すぐに静かになる。

タナトス(楽しげに)よろしい、分かってくれたようだな。
      では、これより、ギガントフラワーの栽培を始める事にする。
        ふふふ。待ってたのだ、この日を!

   嬉しそうなタナトスが、移動黒板に貼られた大きな写真をバンと叩く。
   その写真には、不気味な花(ギガントフラワー)が写っている。

   タイトル「第7話 ギガントフラワー」


      ○秋山市・路地  (昼間)

   広い道路だが、人通りは、ほとんどない。
   コートを着た美人、光明寺が、にこやかな表情で歩いている。
   知り合いらしく、すれ違った母子連れに挨拶をしている。
   子どもの方は「クリスマスのプレゼント」のおねだりをしきりに母に持ちかけている。
光明寺(手に息を吹きかけ)そっか。もうクリスマスなのね。寒いはずだわ

   犬の唸り声が聞こえてくる。
   鳴き声の方に、光明寺が目を向けると、
   バルが大きな野良犬に襲われている。
   翼をかじられたり、爪で傷つけられたり、バルは悲惨な状態である。

   光明寺は、慌てて、バルたちの元へ走り寄る。
光明寺(野良犬へ)こら!あっち、行きなさい!
   強きの光明寺に怒鳴られた野良犬は、驚いて、バルを放して、逃げ出してしまう。
   解放されたバルは、涙目でふらふらと飛行する。

影子バル!こっちにおいで!
   影子の声に誘導され、バルがそちらへと向かう。
   光明寺も、そちらへ目を向けると、
   ノートパソコンを手にした影子がいる。
   寄ってきたバルを、影子は大事に抱擁してやる。

光明寺(影子へ)あなたが飼ってるの?バルって言う名前なんだ。変わった生き物ね

   影子は答えようとせず、光明寺をただ、きつく睨み付ける。
   そして、さっと背を向けると、バルを連れて、静かに歩き去ってしまう。
   残された光明寺は、きょとんとした表情になる。


      ○秋山市・公園  (深夜)

   若いアベックが、イチャつきながら、池のそばを歩いている。

(ひやかし口調に)最近、この町にお化けが出るって話、知ってるかい
(おどけて)何それ、こわーい!
聞いた話によると、水の中に潜んでいて、夜あらわれるとか

   その時、池の表面がバシャッと音を立てる。
   ギョッとしたアベックは、立ち止まり、池の方へ目を向ける。
(びくつきながら)何だよ、おどかすなよ

   その時、二人の目の前に、空から黒い影が舞い降りてくる。
   不気味な蚊の野民、モスキーターである。
   その恐怖の姿を目の当たりにして、
   アベックは震え上がって、ほんとに立ちすくんでしまう。

   モスキーターは、いきなり、女の方へと襲いかかり、その首にとかじり付く。
   次の瞬間、女の姿は粉となり、消えてしまう。
モスキーターヤハリ、ダメカ
   モスキーターは、
   血の気を失って、硬直している男の方へ体を向ける。
モスキーターオ前ハドウダ?オ前ニ、永遠ノ命ヲサズケテヤロウ
   モスキーターは、男に襲いかかり、首から血を吸いだす。
   悶える男は、地面に倒れてしまう。
   しばらく、倒れた状態で、ガクガクと大きく震えているが、
   やがて、男の表皮を破って、中からモスキーターそっくりの野民が出現する。
   二匹になったモスキーターは、
   お互いの顔を見ながら、気味悪く羽音のような声で笑いあう。   (FO)


      ○秋山市・ひさお邸前  (昼間)

   塀に囲まれた、豪勢な屋敷。
   門には「間野ひさお」の表札もかかっているが、鉄の扉は冷たく閉まっている。
   その前に、バルを連れた影子が来ていて、物欲しそうに門の内の方を眺めている。

光明寺(笑って)そこの主人だったら、もう三カ月以上前から、お留守よ
   影子が、声の方に振り返ると、すました光明寺が立っている。
光明寺(優しく)私、この町に住んでいる人間だから、本当の話よ。
         光明寺と言うの、よろしくね。
    このお屋敷に住んでいた間野さんって人、そうとうな財産家だったらしいけど、
       蒸発したと言う噂もきくわ。
     あなたは、ここの人と、どんな関係だったの?
    知ってるわよ、前にも、ここに来て、中の様子を眺めていたでしょう

   影子は、うるさそうに、光明寺の方へ背を向ける。
光明寺(肩をすくめて)ごめんね、詮索しちゃって。
     最近ね、この町に変わった人が沢山集まってるらしいと言う話も聞いているから。
        例えば・・・

   光明寺が、チラリと後ろに振り返ってみる。
   遠くの方に、アーマー服にサングラスの永山がいて、
   こちらの様子をそれとなく偵察している。
   光明寺に見られると、永山はさりげなく路地の奥へと隠れてしまう。

光明寺他にも、夜な夜な、化け物が現れているとか。
     実際に、行方不明者も増えているらしいし

影子(ぶっきらぼうに)あんたも、エコには近づかない方が身のためだよ

   反応に困った光明寺は、ふとバルに目を向ける。
光明寺そう言えば、あなた、
     こないだ、バルが犬に襲われていた時、
      そばに居たのに助けてあげなかったわよね。
    どうして?バルの事が可愛くないの?

影子(強く)可愛いわよ。バルは、大切な友達だもの。
     でも、いつでも守ってあげられる訳ではないわ。
       いつかは、一人になってしまう時が来るかもしれない。
    エコの気持ち、あなたには分からないでしょうね

   光明寺は、言葉につまって、黙ってしまう。

   その時、地面が大きくグラグラと揺れ出す。
光明寺(動揺して)じ、地震?珍しいわ。この地域で、こんな大きな地震だなんて
   影子とバルは、動じずに、寄り添って、ぐっと構えている。

   地震はすぐに止み、光明寺は安堵の表情になるが、
   影子は険しい表情で遠くの方を眺めている。
光明寺(きょとんと)どうしたの?
   光明寺も、影子が見ている方へ目を向け、すぐにがく然となる。
光明寺(叫ぶ)なに、あれ?

   なんと、その方向の町のど真ん中には、巨大な花のツボミが出現していたのだ。


      ○秋山市・ツボミの付近  (昼間)

   巨大なツボミの周辺は、まさに被災地さながらの状況で、
   警官たちが、ツボミのそばから、ヤジ馬たちを追い払っている。

   状況を実況中継しているテレビ報道者もいる。
レポーター(マイクへ)見てください!
       今、秋山市では信じられない事が現実に起きています。
      100メートルはあろうかと言う、巨大な花が、
        町のど真ん中の地面を割って、出現したのです。
     これも土壌汚染が原因の突然変異によるものなのでしょうか。
       大自然が、おごれる人類に対して警鐘を鳴らしているのでしょうか!

   大勢集まっているヤジ馬たちの中には、実は、下子、アヤ、球異たちの姿もある。
   恐るべきツボミを前にして、三人ともおののいている。
下子(わめく)おい、どうなってんだよ、この町は!
     来たばかりだと言うのに、いきなり、事件かよ


      ○秋山市・ビルの屋上  (昼間)

   プリンスと側近たちが立っていて、
   同じく、遠くの方に突如生えた巨大なツボミ、ギガントフラワーの姿を、
   涼しげに眺めている。

プリンス(楽しげに)タナトスめ、始め出したな。
      なかなか美味そうな植物ではないか。
    あれは、闇十字の科学者たちが、我々の為に咲かせてくれたのだ。
     (側近へ)どれ、タナトスと連絡はついたかね
側近(申し訳なさそうに)すみません、まだです。
     さっきから交信は続けているのですが、うまくつながらないのです

   プリンスは怪訝そうな表情になる。

   続けざま、プリンスの後ろに、羽音を立てて、モスキーターが舞い降りてくる。
プリンス(クールに)吸血モスキーターか。
      この町での作戦は、お前に任せてある。 期待しているぞ

   気味の悪いモスキーターは、嬉しげに体を震わす。   (FO)

       (CM)


後編へ続く