第9話「神々の住処」  
METATRON  

 

      ○倉庫内

   薄暗い中に、埃をかぶった沢山の器具類が、所狭しと置かれている。

   ふと、静寂した空気に、足音が響き渡る。
   足音の主は、一つの大きな器具の前に立ち止まる。
   それは、人間大のカプセルである。中には、凍りついたひさおが収納されている。
山井の声(嬉しげに)ふふ。見つけたぞ

   足音の主、山井博士は、カプセルを軽くいじくって、パカリと蓋を開いてしまう。
   途端に、カプセルから蒸気が噴き出し、ひさおの解凍が始まる。
   すぐに作業は終了し、再生したひさおがゴホゴホと咳をする。
山井妹よ。気が付いたか
   山井博士は、白衣を着た、ひさおに似た顔の老学者である。
   彼の姿を見て、目覚めたばかりのひさおもハッとする。
ひさお(笑顔になり)お兄さま!
   ひさおは山井にすがりつき、山井もひさおを優しく抱きしめる。

山井妹よ。長い間、辛かったろう
ひさお私、どれだけの間、凍っていたの?
山井10カ月だ。今は、もう2002年の春だよ
ひさお(淋しそうに)そう。
      じゃあ、ソルトレークのオリンピックも、もう終わっちゃったのね

山井妹よ。感傷的になっている時ではない。
    私がここに来たのは、栄光あるフリーメンの勝利、人類の未来の為だ。
      私の右腕となって、手伝ってくれるね?

ひさお(ニコリとほほえみ)ええ。喜んで
山井(勇ましく)では、いざ行くぞ。我らが町、五徳市へ!

   タイトル「第9話 神々の住処」


      ○研究室

   質素に片付けられており、一人でくつろいでいるタナトスが、
   机について、ワインなぞ飲みながら、何かの設計図を眺めている。
   とてもリラックスしている様子。

山井いい身分だね、タナトスくん
   その声にギョッとして、タナトスが部屋の入り口の方を見る。
   ドアは開けっぱなしで、
   そこには、いつ来たのか、山井博士が立っている。

タナトス(動揺して)や、山井くん。いつ、日本へ?
        確か、アメリカで活動中だったのでは?

山井わしだけじゃない。妹もいるよ
   山井博士がスタスタと、部屋の中へ入ってくる。
   その後を追うように、ひさおも現われる。
   ひさおは、きつくタナトスを睨み付けている。

タナトス(うろたえて)マダム!いつ復活を?
ひさお(タナトスへ)なぜ、すぐに氷を溶かしてくれなかったの?
タナトス(しどろもどろに)それは・・あの時は、プリンスの目も光っていたし・・
山井(大らかに)まあ、二人とも止めたまえ。
      今日は、喧嘩をさせたくて、ここへ訪れたのではない。
    タナトスくんに用事があってきたのだ

タナトス(きょとんと)私に?
山井そうだ。応じてくれるかね?


      ○小さな個室

   薄暗くした中で、机を間に挟んで、タナトスと山井が向きあっている。

山井ご存知のように、わしは、
    他天体に人類の植民地を作る計画、メタトロンプロジェクトを推し進めていた。
     ところが、土壇場で問題が浮上してしまったのだ

タナトス(眉をひそめ)問題ですと?
山井そう。人類を他天体に送るのはいいのだが、
    月とか火星と言った、近辺の星では、
      環境が過酷すぎて、普通の人間は住む事ができないのだよ。
   そこで、君が開発した野民を貸してもらえないかと思ってね

タナトス親愛なる博士の為なら喜んで、と言いたいところだが、
       私の野民にも、まだ色々と問題があってね。
     他天体に住ませるのなら、ニューマンは不向きじゃろう

山井それならば、旧野民でも構わない。そう言えば、影子の件は、どうなったのかね
タナトス(躊躇しながら)あの娘なら、今頃・・・


      ○上空  (昼間)

   一面、雲に覆われている。
   その中を、
   ドクガールに化身した影子が舞い、
   一方で、彼女を追い回すように、
   翼を持った、奇妙な形の、深紅の飛行戦車バイオレンス号が縦横無尽に飛び回っている。

      ○バイオレンス号内・操縦室

   体中、毛むくじゃらで、
   四肢が全て足で、
   頭の部分にコブのついたニューマン、キャリバーが提督を務めていて、
   操縦席についたパイロットたちに指示を出している。
キャリバー(いやらしく)ヒヒヒ。旧野民め!今日こそ、仕留めてやるぞ!

      ○上空  (昼間)

   ドクガールとバイオレンス号の追い掛けっこが続いている。
   バイオレンス号は、光線砲からソルレーザーまで出して、攻撃を仕掛けてくる。
   対するドクガールは、この強力兵器に対して、あまりにも非力で、
   逃げ回るのが精一杯にも見える。
   ところが、バイオレンス号の動きが次第に鈍りだす。

      ○バイオレンス号内・操縦室

パイロットキャリバーさま。バイオレンス号のエネルギーが切れかけています!
キャリバー(わめく)すぐ、太陽光線を補充しろ!
        せっかく、ここまで追い詰めたのだ。
           今、逃がす訳にはいかん!

      ○上空  (昼間)

   バイオレンス号が空中で急停止し、
   その上部の装甲の一部がスルスルとスライド状に開く。
   そして、中にあったガラス板、太陽光線吸収板が剥き出しになる。
   ずっと、押され気味だったドクガールは、目ざとく、それに注目する。

   ドクガールは、猛スピードで、バイオレンス号に向かってゆくと、
   鋼鉄のムチを取り出し、動かないバイオレンス号へ反撃を開始する!
   太陽光線吸収板を片っ端から叩き割ってゆく。
   エネルギー補充に失敗したバイオレンス号は、グラグラと揺れ始め、
   やがて、一直線に地面へ落下してゆく。
キャリバーの声(悔しげに)くそう、覚えてろよ!このカタキは必ずとるからな!

   空中の一点に停止したドクガールは、
   墜落するバイオレンス号を見届けると、
   別の方向の地上に目を向ける。
   そちらには、都市らしき建物群が見える。
   五徳市らしいのだが、
   上空から見ても、建物の雰囲気が、何となく、おかしい。
   ドクガールは微妙な表情をしている。


      ○フリーメン・司令室

   会議室風の場所で、山井、タナトス、ひさおらがくつろいでいる。

   そこへ、配下の一人が駆け込んでくる。
部下(きびきびと)ご報告します!
      影子が、キャリバーさまの追跡を振り切ったそうです!

ひさお(涼しげに)と言う事は、きっと、ここに来るわね

   その時、部屋の隅に控えていた美形外人、ビリヤが、話に割り込んでくる。
   ビリヤは、金髪で、黒のスーツに、サングラスと言う出立ち。
ビリヤ(キザっぽく)私ノ出番カナ?
山井(すまして)いや。ビリヤくん。君は、まだ控えていてくれたまえ
   ビリヤは、残念そうにほほえむ。   (FO)


      ○五徳市・近郊  (昼間)

   町のそばなので、それなりに民家も点在している。
   ただし、立入り禁止区域の為、今は無人の様子。

   五徳市の方に続く、幅広のアスファルトの道を、
   バルを連れ、ノートパソコンを持った影子が、堂々と歩いている。
   影子は、時々、後ろの方をチラチラ見ているが、
   実は、球異が隠れて、影子を尾行しているのが、バレバレに見えている。
   球異は、電柱やら家屋の影に隠れて、影子のあとを追っているのだが、
   ベテラン探偵らしくもなく、妙にソワソワしている。

   突如、目の前の影子が、
   バッと頭上へと右手を突き出し、天を指さす。
   きょとんとした球異は、つい空を見上げてしまうが、
   別に変わったところは何もない。
   球異が、影子の居た場所に目を戻すと、そこには、もう誰の姿もない。
   慌てた球異は、つい隠れていた物陰から、身を乗り出してしまう。
球異(動揺して)しまった!影子ちゃんに逃げられちゃったよ〜
   その時、球異の背後に、険しい表情の影子がヌッと現われる。
影子(球異へ、きつく)誰に頼まれて、あとをつけてるの?白状しなさい
球異(影子の方へ振り返り、うろたえながら)いえ。つけてるなぞ、滅相もありません!
           おいらは、ただの通りすがりの名探偵でして・・

影子(厳しく)ごまかすのは止めなさい!
     エコに関わり過ぎると、酷い目に遭うわよ!

球異(にやけて)奇麗なバラにはトゲがある?
影子(呆れて)もう、バカ!

   その時、不気味な機械音が聞こえてくる。影子の表情がハッとなる。
影子(叫ぶ)危ない!
   影子は、球異を突き飛ばし、自分も飛びのく。
   次の瞬間、二人が居た場所の地面にポカリと丸い穴が開く。
球異(きょとんと)な、なんだぁ?
影子(早口に)侵入者探しのトラップよ!
     (ハッとして)ほら、まただわ!
   影子が、再び、球異を突き飛ばす。
   途端に、その下の地面に、また丸い穴があく。
   影子は、すっぽりと、その中へ落ちてしまう。
   同時に、穴はスッと消え去る。

球異(慌てて)あ、あ、あ。影子ちゃーん!
   かくて、球異とバルだけが、そこに取り残されてしまう。
   球異は、困り果てて、その周辺をうろうろと歩き回る。   (FO)

       (CM)


後編へ続く