10、「影の少女」の時系列

 「影の少女」と言う小説は、実は、時間の流れどおりに、順番にエピソードが紹介されていません。回想や過去の判明などが、あとから何度も何度も繰り返され、話が幾度となく前後する仕組みになっています。
 これは、語り手・正一と同時進行の視点で、影子の生涯を紹介しているがゆえなのですが(よって、エピソードの紹介の組み入れ方自体は非常に現実風です)、結果として、読み手にとっては、全体を通した一直線の時間の流れが分かりづらくなっているのも事実です。
 そのへんの正しい話の流れを、ちょっと解きほぐしてみましょう。

  • 影子が所沢家にひきとられる。(1話。梅雨時が過ぎた5月末ぐらい?)
  • ひさおの葬式、他。(2話。所沢家にひきとられて、学校へ転入するまでの間)
  • 影子の転入といじめの開始。(3、4話。期末テスト前の6月末ごろ)
  • 夏休み。(4話。7月、8月あたり)
  • 2学期と新たないじめの始まり。(5話より。8月末か9月から)
  • 悪質な性的いじめ。(9話。9月末ごろから10月にかけてか?)
  • 影子の誕生日とセックスいじめ。(6話。10月はじめか中旬ぐらい)
  • 正一の影子レイプ未遂事件。(7話。セックスいじめ事件から少したって)
  • 桐生たちの破滅。(8話、9話と11話。10月末か11月はじめごろ)
  • 影子の入院と平和な日々。(10話。11月から12月にかけて)
  • 山精との接触と影子の正体判明。(12話、13話。恐らく、12月なかば)
  • 永山との決闘。(13話、14話。2学期終業式なので、12月末)
  • 影子の失踪。(14話、15話。永山との決闘後、次の年へ繰り越して)
  • 影子との再会と最期。(15話以降。冬休み中の話なので、1月はじめか?)

 大きな流れは、以上のようになりますが、細かい部分でも、時々、過去に逆戻りするようなシーンがありますので、それについては、順次、説明してゆきたいと思います。
 さて、こうしてタイムテーブルを作ってみると気付くと思うのですが、本当は、影子と正一の交流期間は、わずか半年程度なのです。あの残酷ないじめの数々も、たったの二カ月半の間の出来事だったと言う事がお分かりいただけるはずです。
 もちろん、「現実的」に考えますと、これほど圧縮されたスケジュールはありえないような気もしますが、フィクションとして、わざと時間の進行を曖昧にしか読者に伝えなかったがゆえに出来た離れ業でもあります。(笑)

 

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