15、所 沢家の親族騒動

 「それまで住んでいた研究所が火事で全焼してしまった為、彼女はある日、突然我が家へとやって来る事となったのであ る。」

  ストーリー冒頭の影子褒めに続く、この一文も、「影の少女」リメイクに当たって、真っ先にひらめいた文章です。「影子と正一がいとこだ」という、本作独自 の解釈は、この文章を使いたいが為だけに強引に決定してしまいました。そもそも、私は、あだち充の代表マンガ「みゆき」が好きでして、あんな感じの設定の 話を書きたいなと思ったのです。結果的に、影子と正一を親戚にする事で、旧作品群に見られた「無関係のはずの影子と正一が接近する不自然なぎこちなさ」が 解消され、ストーリーの方もスムーズに流れたように感じられます。
 さて、影子の母親が火事で焼け死ぬと言う、実にフィクションくさい事件のあ と、残された娘の影子をめぐって、親戚中が大騒ぎになると言う、実に現実的な描写が展開されます。これは、他でもない、私の一族でも、私が小さかった頃 に、似たような騒動を経験しておりまして、その時の様子を参考にしたからなのであります。私の家でも、短い期間ですが、幼いいとこを一人預かり、私に義弟 ができた時期がありました。(その子には、里親が見つかり、すぐ引き取られていきましたが)親が両方とも亡くなり、残された子供たちをめぐって、本人たち 以上に、親戚が騒いでいたのも見た事があります。私自身も、高校一年の時に父を亡くしており、親を亡くした子供の周辺の状況については自ら体験してます。 「影の少女」における、ひさお死後の妙に詳しい影子への対応は、どれも、事実を参考にしたものだったのです。
 「事実を参考にした」部分と 言えば、いじめのシーンもそうです。影子と言う、ありえないキャラクターや、後半のエスカレートしたいじめと比べて、前半部のいじめが始まる部分だけは、 やたらと描写が細かく、展開も非常にリアルです。これもまた、私自身のいじめ体験を元に、内容を再構築したシーンだったからなのでした。

 

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