16、影 子の外見

 第2話のサブタイトルは「影子について」ですが、この見出しには大きく偽り ありで、実際には、第2話内では影子の身体的特徴はほとんど紹介されていません。「小柄でこそあったが、色白で、スタイルも女性として、すでに完成しかけ ていた」程度のもので、あとは性格、振る舞いの話ばかりであり、それさえも無理やり中断して、「影子の容姿について書き始めるときりがない」と言って、ス トーリーにすぐ戻ってしまいます。
 なにしろ、美人の外見描写というものは難しいものでして、あまり詳しい事を表現しすぎますと、読者に「そういう特徴の子は、オレには美人に見えない」と も言われかねません。だからという訳でもないのですが、影子の身体的描写の説明はきわめて少ないのです。
 ただし、話を読み進んでゆくうちに、最初は語られなかった影子の身体的特徴がさらりと分かるようにもなっています。たとえば、第3話の終盤近くで、彼女 が泣きそうになったおかげで、実は大きな瞳の持ち主だった事が判明します。このへん、いじめのシーンと混ざり合う形で、影子の身体的特徴がどんどん明かさ れてゆくような仕組みにもなっており、第5話を見れば、髪を切られるいじめを通して、登場当初は影子が長髪だった事が分かったり、顔を叩かれる事で、彼女 が色白なだけではなく、柔肌でもある事もさりげなく告げられたりしています。虫歯いじめのエピソードからは、影子が基本的にきれいな歯の持ち主だった事も 読み取れます。
 きゃしゃな体つきだった影子が、一時的に、太ってしまった件については、第4話の段階でも触れられてますが、結局、ハードないじめ生活のせいで、またや せ細ってしまったようです。このへんの身体的変化を影子に与えたのは、私自身の「可愛い女の子」観で迷っていた部分を反映しておりまして、ほっそりと痩せ ているのと、やや健康的にふくよかなのと、どちらが美少女らしいかが、どうしても片方に決め切れず、こんな姑息な展開にする事で、両方を影子に当てはめて しまった次第です。もっとも、文章では「きゃしゃ」と呼ばれがちな影子が、いざイラストにしてみますと、結果的に丸っぽい女の子になってしまっているケー スが多いのも事実でして、こういう手法をとる事で、2タイプの影子の両立も何となく実現できて、これはこれなりに良かったんじゃないかと思っています。
 こんな感じで、決して説明不足過ぎる訳でもなく、ストーリーにきちんと絡める形で、伏線も描写もさりげなく盛り込まれているというのが、まさに「影の少 女」ならではの、小説技法なのであります。

(「3、影子の美少女ぶり」も参照のこと)

 

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