19、正一の交友録

 「影の少女」は、正一の手記と言うスタイルで書かれていますので、その内容は必ずしも客観的ではなく、ところどころに 正一個人の普段の癖や思い込みなんかも混ざってしまっている部分があります。そのへんを注意して読んでみれば、意外な真実が見えてきたりもして、たとえ ば、学校内での正一の交遊関係さえもが、さりげなく分かってしまうのであります。
 と言いますのは、仲のいい友達の名前は、本筋以外のシーンでも、やはり頻繁に出てくるからです。さらに、相手をどう呼んでるかで、その親しさの度合いま でもが分析可能だったりします。すなわち、仲のいい生徒については名前の方で呼んでいるし、そうでもない生徒については、クラスメートであっても苗字で呼 んでいるみたいだからです。
 正一は、原則的に、クラス内の男子については、全員、分け隔てなく、名前の方で呼ぶようにしているようです。しかし、女子につきましては、それなりに親 しい子とそうでない子が分かれてるようでして、いわゆる、おとなしい女子であるゆう子や光子らの事は名前で呼んでいます。反面、苦手とする桐生たちについ ては、最後まで苗字読みです。意外なのは、クラスのアイドル・京子の事を名前呼びしている点でして、これは正一が特に彼女と親しいと言うよりも、京子の方 が皆から好かれていて、身近に思われている存在だったと言う事なのかもしれません。
 クラス外の生徒でも、定男のような顔見知りなら、名前呼びです。結城令子のように、のちに親しくなった女生徒についても、名前呼びしています。ただし、 親睦が深まらなかった清水や、それこそ存在しか知らないらしい川上や米田みたいな男子生徒となると、完全に苗字呼びです。上級生であっても、強く慕ってい る川合などの場合は、愛称の山精で呼んでたりします。
 このような正一の癖は、実は影子との対面時にもすでに始まっておりまして、第2話によると、再会したばかりの正一は、やっぱり、親しくなる前の影子の事 は苗字呼びしていたらしい節がうかがえるのでした。
 もっとも、以上のような考察は、キャラクターたちの名前の呼び方の都合より、あとからひらめいたものでありまして、最初から、このように設定していた訳 でもなかったりします。

(「13、素晴らしき隠しゲストの数々」も参照のこと)

 

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