26、いじめは語る

 第5話「子どもの地獄」は、「影の少女」の中でも、屈指の残酷な章です。書いた私自身も読んでて辛くなる時があるのですが、それでも書かなくてはいけなかった内容でもあります。
  私が、この章を通して描きたかったのは、「級友にいじめられる子どもの実態」であり、いわば、この章は、小説の一部であると同時に、リアルないじめ白書に もなっていたのです。それゆえ、普通の小説でしたら、いじめの場面はストーリーに沿って断片的に挿入されるだけなのに対して、本作の第5話のいじめのエピ ソード群は、物語全体のバランスを崩して、まるでいじめ報告書の本文のように横並びに次々と紹介されてゆきます。まさに「影の少女」ならではの、特殊な書 き方が用いられている訳です。
 この「影の少女」を収録したサイト「かげこの玉手箱」には、私の個人的配慮から、普通のいじめ文献なら必ずあるはずの「いじめの実態の紹介」のコーナーというものがありません。しかし、皮肉にも、この「影の少女」の第5話が、「いじめのやり方カタログ」を担う形になっている次第です。
  なお、一見、ストーリー進行とは絡まずに列記されているように見える、いじめの実態の数々ですが、本当は、伏線を隠すカモフラージュの役目もしっかり務め ています。のちに影子の新たな敵として立ちふさがる永山や山精(生徒会長)の存在が、いじめのシーンの合間に、さりげなく触れられているのです。壮絶ない じめの描写に読んでいる人がすっかり心を奪われているすきに、作品自体は冷静に今後の展開も用意していて、読者が忘れた頃に、それらが予想外に本編に参加 してくるという物語構成となっているであります。

 

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