32、いじめられっ子の本音

 影子と清水がいじめでセックスをした事が分かって、一部の生徒たちは大騒ぎする事になります。同じ被害者にも関わらず、女の影子は同情されて、男の清水は悪者扱いされるなんて、なんとも男の立場は辛いとも言えます。
 清水を責めるだけでは気が収まらず、正一は影子までもどやしてしまいました。
「なぜ、清水の事なんかばかりを、そんなにも思ってやるんだよ。どうして、もっと自分の事を考えようとしないんだい。どうでもいいじゃないか、清水の事なんて」
 その事に対する影子の答えはこうでした。
「自分の事は、皆が考えてくれるわ。それとも、正一くん、清水くんの代わりに米田くんたちにいじめられてくれる?」
 影子には、同じいじめられっ子として、清水の気持ちがよく分かったのです。だから、たとえ、自分を辱めた直接の相手であっても、清水の事を責める気にはなれなかったのです。それが、実際の被害者の本当の気持ちと言うものなのです。
 それなのに、清水の事も分かってやろうとせずに、一見、影子に同情してくれてるように見える正一は、ほんとは、影子の思いなど全然分かってないと言えます。だから、影子はこう切り返すのです。
「正一くん、清水くんの代わりに米田くんたちにいじめられてくれる?」
 もちろん、正一には、自分が代わりにいじめられてでも、いじめられっ子を救おうと言う固い気持ちなどは無いでしょう。しかし、その程度の気持ちでの同情と言うのは、本当の意味での被害者の心理など分かるはずも無いと言う事なのです。
 そして、その事が今後の展開にも大きな波紋を投げ掛ける事になります。
  影子は「自分の事は、皆が考えてくれる」と言いましたが、結局のところ、彼女の事を正しく分かってくれる人には出会う事も、保護してもらえる事もありませ んでした。だから、影子は自分を救う為に自ら行動する事になり、その事は全人類への脅威へとつながってゆく事になるのです。

 

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