34、影子の悪魔の実験

 第7話あたりから、いよいよ影子が本性を表す事になります。
 彼女の頭にあった考えとは、「全ての人間を幸せにする」事でした。そうし た理屈自体は、研究所にいた頃から抱いていたようで、それゆえに、こっそりとドーパミンを活性化する薬品とかも調合していたのでしょう。それが、清水との 事件がきっかけとなって、本格的な人体実験に踏み切ってみる気になったのです。
 しかし、このドーパミン活性剤は失敗でした。影子が望んでいたよ うな効果は得られなかったのです。それでも、不屈の影子は「全ての人間を幸せにする」研究を止めようとはしません。人間の心を数式や図形に書き直してみる 解析を経て、恐怖の色・恐怖の音などの発見に成功します。さらに、催眠術を使って、人間に幸福感を与えてみる事に挑戦してみたり、ついには、アルファ波中 毒にする事で、全世界規模で全人類を幸せな気持ちにしてしまう事も達成してしまいます。
 本作において、他の同傾向の作品と著しく異なっている点 は、加害者である影子が、他者に害を及ぼす事が目的なのではなく、あくまで幸せにしてあげようと企んでいるところです。しかし、その幸せにする為の方法が どこかズレていて、結果として、相手を破滅させてしまう事になるのです。
 影子は、人間の心さえも物理現象の一種として捉え、物理的な方法で幸せ にしようと考えてしまったのです。大脳生理学や心理学を駆使した影子のハイパーテクノロジーは、薬物や催眠現象、脳内電気など多分野の学術知識を応用した 精神操作方法を展開する事になります。しかし、本人の意思を無視して、その人を幸せにしようという事自体が間違った発想だったのであり、影子の大いなる計 画は最終的には完成しそこねたのでした。

 

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