36、レイプ未遂が及ぼした影

 第7話は「おとなしい奴でもやる時はやる」という意味深げなタイトルですが、その文面通り、おとなしくて、善良かと思われた正一が影子の事をレイプしかけちゃうという、とんでもないエピソードが収録されています。
 このエピソードは、実際には「rewrite」ではじめて採用されたアブナいネタという訳でもなく、最初のオリジナル版の「影の少女」で も、正一が強引に影子と絶交しようとするシーンがありますし、その改訂版にも、影子の全裸を見たがって、正一が無理やり影子の衣服を脱がしてしまう場面が あります。(「rewrite」のレイプ未遂シーンは、実は、この改訂版のくだりを、かなり忠実に再現したものです)これらを書いた頃は、作者の私もまだ 中学生でしたので、正一の行為の不純な動機もかなり控えめなものにおさえていたのですが、「rewrite」を書いた時は、もう私もかなりの年齢の大人で したので、ためらう事なく、正一が影子を襲った目的をセックス目当てにしてしまった次第です。
 このシーンが、過激さを変えつつも、なぜ、どの バージョンの「影の少女」にも存在しているのかと言いますと、この正一の裏切りのような行為が影子に大きな衝撃を与え、ストーリーの転換部分となっている からなのです。旧版の「影の少女」では、この正一の暴力に対する嫌悪がきっかけとなって、影子は超能力に目覚める事になっています。他方の 「rewrite」では、正一のけがれた欲望をかいま見た事で、影子は人間の心が分からなくなり、それまでの穏やかな人間分析をやめて、実践的な実験研究 の道へと突っ走りだす事になるのです。
 ある意味、正一さえ、こんな酷い事をしなければ、この先の影子の脅威は起きなかったのかもしれません。
  なお、一見、影子は正一にレイプされかけた一方的な被害者のようにも見える訳ですが、同時進行で、彼女も米田たちを薬物中毒で廃人にしてしまうという恐ろ しい行為に手を染めていた次第で、影子もまた、もう一人の「やる時はやる」おとなしい奴なのであり、ほんとは影子の方がずっと怖い「おとなしい奴」だった のだとも言えそうです。

 

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