40、影子の意味深な願望

 第8話の「男の子バンザイ!」と言うサブタイトルは、もちろん、本話の中盤で、影子がもらす願望「男の子に生まれたかった」に引っ掛けられています。
 しかし、なぜ、影子が男になりたいと思ったのか推測しますと、そこからは無数の秘密の理由が浮かび上がってきます。
 最初、このセリフを聞かされた正一は、影子は自分が女だったから、仲良しだった正一にさえ体を求められるようなはめになってしまい、それで、自分が女に生まれた事を恨んだのではないか、と考えました。
  しかし、実際の事情は、それほど単純なものではありませんでした。この時期、影子は執拗な性的いじめを受けさせられていて、性器も女の羞恥心もボロボロに されていたのです。こんな汚れた体にされてしまったら、もう女としての正常な幸せは望めないと諦めてしまっていたのかもしれません。同じような性的いじめ を受けるんだったら、まだ男として受けた方がマシだったとでも思ったのでしょうか。確かに、処女喪失とか妊娠の事まで気にしながら、性的いじめを受けさせ られるのは、あまりにもキツすぎたかもしれません。
 でも、男の子になりたいと言う影子の願望には、さらに深層的な秘密も混ざっていたのです。影 子は、実際には両性具有のミュータントでした。これまでの影子の描写でも、時々、影子が魅力的な男の子のように見えた、と正一が筆を滑らせていたように、 一見、可愛い少女のように振る舞っていても、影子の体内では同じくらい男らしさも沸き上がり始めていました。戸籍上も肉体的にも女である以上、女っぽくの み生活していかなくてはいけない事が、影子には辛くなり始めていたのではないのでしょうか。その反動からか、家出後の影子は、不良少年みたいな格好になっ て、それまで押さえてきた男くささをまとめて発散してしまう事になるのです。
 性同一性障害と言う病気が現実に存在して、それに似た症状みたいな感じもしますが、影子の場合は両性ですので、男女両方を自覚しており、どちらも表面に出す必要があります。そのへんが、実は、ミュータント・影子ならではの独自さを作り出していたのだとも言えましょう。

 

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