41、デタラメ情報にご用心

 影子のハイパーテクノロジーについても言える事ですが、「影の少女」の作中では、そうとう沢山のいい加減な説明が、まるで事実であるかのように 堂々と散りばめられています。ストーリーを成立させる都合上、嘘でも無理やり本当の事みたいに記さざるを得なかったものもあれば、デタラメ丸出しの嘘を、 わざとそのまま挿入したようなものさえあります。
 つまりは、「影の少女」とは、正一の手記というスタイルの小説なのです。執筆者の正一が、間 違った事を覚えていたり、真実を知らずに、他人が語ったデタラメをそのまま紹介してしまったら、その話をまるで本当の事みたいに書いてしまう事でしょう。 「影の少女」の中では、作者の根本的ウソ説明以外にも、そういう手記者・正一が原因のデタラメ情報まで意地悪く混ざっていて、そのへんが、さらに話をやや こやしくしていく仕組みになっているのです。
 正一のいい加減な推察の一例としましては、第8話に出てきた影子所蔵の洋書がラテン語で書かれてい たものではないか、と言うものがあります。確かに、ラテン語なんかで書かれていたら、秀才・和司(所田)でもさすがに読めなかったのは頷けますが、しかし、ラテン 語と言うのは、基本的に、全部アルファベットなのです。影子の洋書の本文は「あまり見かけない変な記号」の方が多かったと言うので、恐らくラテン語ではあ りません。正一は、完全に当てずっぽうな推測を平気で書いていた訳です。しかも、この洋書のタイトルは「魔女審問の手引き」となっているようですが、そん な題名の本は中世の魔女狩りの歴史を調べてみても、実は見当たりません。この本の正体は一体何だったのか、ひょっとしたら、桐生たちを怯えさせる為に影子 が創作したものだったのではないかとも思えてきて、謎は深まるばかりです。
 また、第12話では、影子がタロットカードの解説をして、それを聞い た山精が間入れずに褒めるシーンがありますが、実は、この影子の説明も真っ赤なデタラメです。(昨今の研究では、トランプの方がタロカードより歴史が古い と考えられている)恐らく、影子は虫の好かない山精にわざとウソを語って聞かせたのだと思うのですが、影子の機嫌を損ねたくない山精は、手放しに褒めてし まったのでしょう。そんな事情も、タロカードの実際も知らない正一は、見た事聞いた事をそのまま、何の注意書きもせずに、「影の少女」内に書き記してし まった訳です。

 

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