43、いじめの仕返し

 ようやく、太田先生がいじめ問題に本腰で介入しだして、影子も救われそうな兆しが見えてきたと言うのに、そんな矢先に、影子の方が学校からも自宅からも姿をくらましてしまいます。
 一部のクラスメートたちは、そんな不可解な影子の行動を見て、こう推測します。影子は、普通のいじめの解決を望んでおらず、いじめっ子たちへの復讐を企んでいるのだと。
 実際の影子は、復讐は考えていませんでしたが、いじめっ子の桐生たちを被験者にして、自分の研究の人体実験を目論んでましたので、少なからず当たっていたとも言えたのかもしれません。
  ただ、影子でなくても、学校側が提供する「いじめの解決」には不満を感じる人が多そうな気もします。「いじめを克服する」なんてヘンな言い回しがまかり 通っている事からも分かりますように、およそ、大人たちは「子供たちのいじめ現象」を、学校内で発生する未熟な子供たちの問題程度にしか認識していませ ん。たとえば、勉強のできない子供の学力をあげるとか、だらしない子供にマナーを身につけさせるとか、そういう次元でしか考えていないのです。だから、学 校が行なう「いじめの解決」とは子供たちを指導し、矯正する事だけなのであり、子供たちの間でいじめ行為さえ行なわれなくなれば、それで目的達成と言う事 になるのです。
 しかし、これで本当に円満解決と考えていいのでしょうか。いじめられた側は、それこそ、影子のように、身も心もボロボロにされて いる場合もあるのです。何ヶ月、あるいは、1年中、さらには在学期間の全てをいじめられ続けて、他の子供たちのような思春期や恋愛、クラブ活動さえ体験す る事が出来ず、体中を傷だらけにされて、何十万円もの現金や品物をカツアゲされて、そこまでされながら、ある日、ピタッといじめられなくなったからと言っ て、それで、いじめの問題が解決したと納得できるものでしょうか。学校がいじめ問題を丸くおさめてしまった場合、加害者側がお金や治療費などの弁償をして くれる事はまずありえないのです。
 これじゃ、誰もいじめ被害者になりたいとは思いません。被害者にならないように、誰もが、必死に加害者側(い じめっ子は「いじめが解決」する際も、謝る、叱られる程度の被害しか受けないで済むのですから)に回ろうとする悪循環さえ生じ、ますます、いじめは無くな らないでしょう。学校のいじめが減らないのは、こうした学校のシステムそのものにも問題があるのであり、「影の少女」では、正しいいじめ解決法をめぐっ て、影子は模索する事になるのです。

 

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