46、本当に哀れなのはどっち?

 長らく、いじめられ続けていた影子ですが、第8話より、いよいよ反撃のムードが強まってくる事になります。影子が受けたいじめの数々は、気の毒なほど悲惨なものが多いですが、それでも、影子に絶望的なほどの哀れみを抱いてくれた人は少なかった事でしょう。
 なぜなら、影子は本作の主人公であり、しかも、最初から怪しい部分いっぱいでしたので、そんな謎めいた主人公がやられてばかりで終わってしまうはずがない、と、普通の読者だったら「物語の法則」から無意識に確信しているはずだからです。
  事実、第8話の終盤で、影子の復讐らしき事件が始まると、加害者のはずの桐生たちの方が妙に哀れで、彼女たちのこれから受けるであろう仕打ちがひどく不安 に思えてきます。桐生たちは、脇役の上、悪者であり、そういう連中は、その作品内において、どんな目に会ったとしてもおかしくない、と言う「物語の法則」 も、ほとんどの読者は知っているからです。
 第9話「性的虐待のヴァリエーションその他」の冒頭で、クラス全体が桐生たちを許さないと言う態度を 示した事で、よけい桐生たちの立場は不利になり、味方もなく、孤立した状態になってしまうのですが、その矢先に、彼女たちがとことん陰湿な性的いじめまで 行なっていた事が影子の手記によって判明してしまいます。
 それによって、一時は気の毒に思えかけていた桐生たちに、また激しい憤りを感じてくる ようになるのですが、続けて、桐生たちは本作の手記者である正一をも脅し、怖がらせると言う暴挙に出ます。こうした一連の悪事の続行によって、桐生たちに 抱きかけた同情の気持ちもすっかり吹っ飛んでしまいますが、その直後、詳しい状況も分からぬままに、桐生たち三人娘は薄気味悪い形で残酷に破滅してしまい ます。恐らくは、影子が原因で・・・。
 いじめのシーンを読んでいると、あれほど憎く思えてくる桐生たちですが、こうして陰惨な最期を迎えてしまいますと、やはり、彼女たちの方こそが哀れだったようにも感じてきそうです。

 

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