58、参考文献その3「愛と死」

 「影の少女」の元ネタ作品として三番めに名前をあげている、文豪・武者小路実篤の恋愛小説「愛と死」ですが、実際には、「影の少女」のみではなく、私の書く「可愛い女の子の描写」全ての手本になっている作品でもあります。
  武者小路実篤なんて、あまりにも私の作風からはかけ離れた文学者のような感じもしますが、大体、小学生高学年ぐらいの頃、私にもマンガより小説を読む楽し さに目覚めた時期がありまして、その時に国内外の色々な名作小説を、内容もろくに理解できないくせに読み漁って、その時に読んだ一冊が「愛と死」で、武者 小路実篤の小説はけっこう共鳴できる部分があったので、かなり集中的に愛読していたのです。まぁ、世の中、どんなところでどんな巡り合わせがあるかは、ま るで分からないとも言えます。
 最初こそ、愛好していた武者小路実篤作品の一つに過ぎなかった「愛と死」ですが、中学生になって、少しは恋心が分 かるようになってから読み返してみますと、この作品に出てくる夏子の可愛らしさが無性に伝わってくるようになってきました。文章で、ここまで女性を可愛く 描いてみせた作品には、いまだ私は他に出会った事がありません。それほど、武者小路実篤の夏子の表現は鮮やかなのです。かと言って、武者小路実篤の作品に 出てくるヒロインが全て魅力的かと言うと、そういう訳でもないので、やはり「愛と死」が特別だと言う事になります。(なお、武者小路実篤作品では、「若き 日の思い出」の正子が、唯一、夏子のリメイクと思わせる可愛さを感じさせます)
 「愛と死」は、何度も何度も読み返しましたので、この作品における夏子の描写テクニックは、知らずに私にも身に付いてしまっています。だから、私が小説で女の子(特に、影子)を書いた時、可愛く書こうとすればするほど、「愛と死」の描写に似てしまう訳です。
 ちなみに、この「夏子」という希代のヒロインの名前は、いつかは私も自分の作品で使ってやろうとずっと思っていて、その願いは「パウチ」の村雨夏子で、ようやく実現したのでした。

 

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