89、愛は影子を滅ぼす?

 最初に書いた「影の少女」では、超能力による人類社会の制圧を企んだ影子は、正一に自分と夫婦になる事を迫ったところ、「傲慢な影子ちゃんは嫌いだ!」と言い返されて、その事がショックで地球征服を止めてしまいます。
 「影の少女rewrite」でも、正一ははっきりと影子本人の事を嫌いだとは言いはしませんが、その代わり、影子が築き上げようとした理想世界の事を拒絶し、その事が影子にとっては考え直すきっかけとなり、地球支配の計画をいったん保留にしてしまいます。
 つまり、どのバージョンの「影の少女」でも、一番のクライマックスで、正一が非常に重要な役割を果たす事となり、影子の人類支配を阻止している訳です。正一も、だてに一人称の語り手キャラをやっていたのでもなかった事になります。
  ここで注視したい点は、いずれの場合でも、正一本人は非力で、ただ自分の意思表明をしたに過ぎず、影子の方がその事によって反省させられ、自分の行動を止 めると言う部分です。つまり、正一が何かを頑張ったと言うよりも、影子が正一によって左右されたのが事件解決の決め手になっているのであります。
  影子が壮大な世界制圧計画を止めてまでして、正一に求めていたものは愛でした。影子にとっては、地球全土を手に入れる事よりも、はるかに愛する男の心が欲 しかったのです。まさに「愛は地球を救う」と言った展開なのですが、他のフィクションとは微妙に違っている点として、「影子が愛される事によって、考えを 悔い改める」のではなく、「影子が愛してたからこそ、考えを悔い改めた」という筋書きになっている事が挙げられます。
 そして、 「rewrite」では、この土壇場での考え直しが、影子にとっては命取りとなったのでした。あのまま、最初の予定どおりに、すぐに世界制圧を実行に移し ていれば、山井博士に介入される事も無く、影子もドクターモアも死なずに済んでいたのです。全くもって、愛のおかげで影子は救われたのではなく、逆に滅び る結果となってしまったのでした。

 

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