究極の謎1、本当に悪かったのは誰?

 第17話のサブタイトルは「本当に悪かったのは誰?」ですが、話の流れから考えたら、ここで尋ねられている「悪いヤツ」とは、ミュータントの影 子の方ではなく、影子を自分の私欲のままに保護しようとした山井博士や、さらには、山井を含む利己的な人類そのものだった、というようにも読み取れそうで す。
 ところが、違うのです。人類悪者説はあくまで表面的な見せかけなのであり、もし「影子を死に追いやったヤツ」を本当に悪いヤツだと見なすのであれば、それに一番該当しているのは、実は何と、正一自身だったと言う事になるのでした。
 「影の少女」のストーリーを、もう一度、頭から追ってみれば分かります。正一は、重大な選択に迫られた時、常に間違った方を選んでしまっているのです。その繰り返しが、どんどん影子を追い込んでゆき、最終的に、山井による影子殺害を招いてしまったのでした。
  まず、正一は、学校で影子がいじめられ始めた時、影子を守ろうとしませんでした。もし、最初期の段階で、影子いじめを止めさせる事ができていれば、影子が 人類社会の弱者いじめの実態に疑問を抱く事も無く、その改善を目論むようにもなっていなかったはずでしょう。影子は、平凡な一人の市民として、一生を終え る事もできていたかもしれません。ここから、さっそく影子の人生の歯車が狂い始めていて、正一はその事に対して何もしようとはしていなかったのです。
  その後も、正一は、影子の望まないような行為ばかりを展開して、影子の目的や行動をどんどん、おかしな方向へ進ませていってしまいます。最終的に、影子 は、全人類支配の結論にまでたどり着いてしまいますが、ここでも、正一は影子の思惑を拒絶してしまいます。あの時点で人類支配を実行していれば、山井に邪 魔される事もなかったので、全くもって、正一のたった一つの決断が影子を死なせてしまった、と言ってもいい事になるのでした。
 もちろん、こんな 愚かな決断をし続けた事に対する報いを、正一はきちんと受ける事になります。すなわち、大切な愛する影子を完全に失ってしまったのです。正一だって、全て は自分のせいだと、うすうす気付いていたのかもしれません。しかし、それを素直に認められないものだから、真実から目をそらすかのように、悪いのは人類そ のものだとばかりに、最終話のあの激しい人類批難にと走ってしまった訳です。
 「影の少女」とは、利他的なのに逆に周りの皆を不幸にしてしまう勘違い善人の影子と、つい我が身ばかりを守ろうとしてしまう弱虫善人の正一の、対極に位置する二人の不器用な善人がお互いの考えを理解できるようになるまでを描いた、悲しい恋の物語だったのであります。

 

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