狂気の銃

(TVドラマ用シナリオ「怪奇地帯るなてっく」より)

 

私が大学生の頃(ざっと18年前!)に書いたシナリオなのですが、 今読みますと、恥ずかしいほど、雑な内容です。(苦笑)警察の描写もいい加減だし、キャラクターたちの会話も上下関係をすっかり無視しています。それでも、あえて、多少の漢字や句読点の位置を直すだけで、ここに公開する事にいたしました。
元は、円谷プロの名作恐怖ドラマ「怪奇大作戦」を私なりの解釈で1時間ものシリーズドラマに書き直したもので、毎回、あの所田(!)をリーダーとする警察特殊捜査班「科学警察」が、怪しい怪奇現象に立ち向かってゆきます。警察内に「科学警察」と言うものは実在しますが、本作の「科学警察」は、むしろ「Xファイル課」みたいなオリジナルの特殊部署だと考えていただいた方がいいでしょう。所田の部下役で、清水(作者の分身キャラ)と光明寺もレギュラー登場しています。
本エピソードでは、影子は「エコ」のニックネームでゲスト出演しています。メインゲストではありませんが、重要な役であり、「かわいい系」や「ヒーロー系」ではなく「フーテン娘路線」の彼女の顔を見る事ができます。人生に醒めた天才少女、画家としての才能、幼く見える容姿、さばけた無邪気さ、光明寺とのフィーリングの一致など、他作品と通ずる要素がいくつも描かれている点が注目です。影子の他に、あの戸燈も、かなり強烈なキャラクターでゲスト参加しています。

 

「我々が今行く事ができる場所と言えば・・・空、海、地中、そして宇宙にだって・・・。しかし、果たして、それで科学は全ての謎を克服したと、皆さんはお思いになりますか。いいえ、そんな事はありません。これから始まる物語は、まだ人間には解く事のできない、自然界の、あるいは、人間の心の奥深くに潜むクレージー・ナチュラルの世界なのです」

 

      ○路地裏  (夜)

   一人の男が逃げ込んでくる。それを追っかけて、一人の警官もやって来る。
   警官、男にタックルする。二人は取っ組み合いのケンカとなる。
   ブスッと鈍い音。男がナイフを手にしている。
   警官、腹を押さえて、うめいている。刺されたのだ。
   男、オドつきながら、逃げ出そうとする。
   その時、警官がピストルを発砲!それが体に命中して、男もぶっ倒れる。即死ではない。
   地べたに倒れた二人の男は、ぴくぴく動きながら、死の瞬間を待っている。
   あたりはとても静か。
   タイトル、出る。「狂気の銃」。そして、オープニング・ソング。

      ○路地  (翌朝)

   一人の青年・木沢が、のんびりと歩道を歩いている。どこも変わった様子は見えない。

      ○アパート  (翌朝)

   木沢がやって来て、自分の部屋へと向かう。
   部屋の前にまで到着した彼は、そのドアを開く。

      ○木沢の部屋  (翌朝)

   中に入った木沢は、ドアを閉め、一人っきりになる。
   彼は、そっと服の中に隠していたピストルを取り出し、見つめる。
   ピストルのボディがギラリと光る。あの警官の持っていたピストルである。

      ○警視庁・総監室

   所田と中川警視総監がつっ立っている。
   中川は、窓の外を見つめ、手を後ろに組んでいる。
中川「所田くん。ご存知だと思うが、また困った事になったよ」
所田「と言いますと」
中川「(所田の方を振り向き)例のピストル盗難事件だよ」
所田「(やや、そっけなく)ああ、あれ」
中川「盗まれた警官はすでに死亡していたとは言っても、盗まれたのは事実だ。
 これで、この盗難ピストルで事件でも起きようものなら、また警察に非難が集中する」
所田「はあ、そうですね」
中川「こないだも、岡山の警官の横暴がマスコミに攻撃されて、警察の印象を悪くしたばかりだ。
 これ以上、印象を悪くしてしまうと、今度は警察の信頼にと関わってくる」
所田「はあ」
中川「そんな事態は、できる限り、避けねばならん。
 その為にも、所田くん、
 君のところのチームも、ぜひ今回のピストル発見には協力していただきたい」
所田「分かりました」
中川「ちなみに、今回の事件に関しては、中村くんが担当として当たっているから、
 詳しい状況については、彼から聞いてくれたまえ」

      ○同・捜査課

   刑事たちが仕事をしていて、どっとざわめいている。
   その中には、中村警部の姿も混ざっている。
   そこへ所田がやって来て、彼はゆうゆうと中村のそばへと歩み寄る。
所田「警部」
中村「(所田の方を振り向き)おや、所田くん」
所田「(ほほえみ)ご無沙汰してます」
中村「(ニヤリと)総監に呼ばれたそうじゃないか。どうだった?何の話だった?」
所田「あんたの担当しているピストル盗難事件についてですよ」
中村「(きょとんと)あ、そう」
所田「あんたに手伝ってやってくれと言ってましたよ。
 この事件については、なるべく早期に解決してしまいたいそうですから」
中村「(顔をしかめ)たかが、盗難ピストル捜しに科学警察の介入かね」
所田「(苦笑いし)そういう事です。総監は、妙に科学警察の事を信用しきっていますから」
中村「まあ、いいがね」
   その時、一人のチャカチャカした警官が中村のもとへと走り寄る。
警官「警部、警部!資料の整理が終わりました!」
中村「あ、ご苦労」
   所田、その警官を見て、ちょっぴりきょとんとする。
中村「あ、所田くん、紹介しておくよ。こちらは、新入りの戸燈くんだ。
 今は見習いで、私のもとで盗難ピストル事件の助手をしてくれている」
戸燈「(しゃきしゃきと頭をさげ)先輩!よろしくお願いします」
所田「(圧倒されつつ)よ、よろしく」
中村「戸燈くん。こちらは、科学警察の所長の所田くんだ。
 まあ、二人とも、以後は仲良くやってくれたまえ」
戸燈「(所田へ)先輩、僕、頑張りますよ!
   警部のご指導のもと、必ず盗まれたピストルを捜し出してみせますよ!」
   すっかり、一人ういている戸燈の前で、所田も中村もやや苦笑いしている。

      ○科学警察・事務所

   清水と光明寺が机について、くつろいでいる。
   そこへ、ドアを開けて、所田が入ってくる。
清水「あ、所長。どうでした?」
所田「おお。次の仕事が決まったよ」
光明寺「今度は何です?」
所田「例の警官のピストル盗難事件だ」
光明寺「(きょとんと)え」
清水「ど、どんな形で手伝うんですか」
所田「(笑って)ま、総監閣下じきじきのご命令だ。何かかにか手伝う事にするさ」

      ○木沢の部屋

   木沢が、恋人と一緒に床の上に座って、いちゃついている。
   木沢は、あのピストルを手にしている。
   甘い音楽が、BGMとして流れている。
恋人「(チャラチャラと)ねえ、何、それ?モデルガン?」
   木沢、かまわずピストルをいじくり続けている。
   ふと、その銃口を恋人の頭の方へと向ける。
恋人「(笑って)何するの。いや、やめてよ!バカ」
   恋人、ピストルを木沢の方へと押し戻す。
   黙り込んでいる木沢に、恋人はじゃらけ続ける。   (FO)

      ○路地裏

   例の事件現場を、所田、清水、中村警部、戸燈らがうろつき歩いている。
中村「(路上を指さし)問題の警官が死んでたのは、この位置だよ。
 発見された時には、すでに息が無かったそうだ」
所田「(中村へ)彼の追っかけていたヤクザの死んでいた位置は」
中村「(少し歩き)こっちだ。二人は、刺し違えになったのだろうね。
 まず、逃げのびようとしたヤクザの方が警官の体をナイフで刺したらしい」
清水「それでも、任務を果たす為、ピストルを撃ったと言うのは、この警官さんも立派ですよね」
中村「一発はヤクザの横腹、もう一発は頭を直撃している。
 この二発目の方がヤクザに致命傷を与えたらしい。
 詳しい事は、今、鑑識課の方で調べている最中だがな」
所田「(淋しくほほえみ)結局、警官のその努力にも関わらず、
 彼は誰にも助けてもらえずに、ここで静かに息を引き取った。
 そして、その後、死体が見つかるまでの間に、何者かによって、ピストルを奪われてしまった」
清水「(しんみりと)結局、この警官も被害者なんですよね。何となく、可哀想ですね」
   そんな時。
戸燈「(突然に)警部。やはり、僕の言った捜査方法を実行に移しましょう。
 その方が確実ですよ!」
中村「(顔をしかめ)これ!その話は、今は止めなさい」
戸燈「でもですね!」
清水「(にっこりと)どんな捜査方法だい」
戸燈「(パッと、所田と清水の方を向き)先輩!聞いてくれますか」
所田「(つい)う、うん」
中村「(慌てて)こら、止めなさい!」
戸燈「(早口で)事件当時の、この近辺に住む人々の状況を綿密に調べるんです。
 そうしたら、かなり高い確率で、
 事件発生時のこの地点の状態についてが分かってくるはずでしょう。
 そこで、我々の方で、事件現場の状況を可能な限り再現してゆくのです。
 最終的には、ピストルを盗んだ犯人までが、そこから割り出せれるはずです」
所田「(弱って)そのやり方はちょっとね」
戸燈「これほど確実な方法はないじゃありませんか。なぜ、誰も賛成してくれないのです」
所田「過剰捜査だよ。プライバシーなんかの問題が残る」
戸燈「我々は警察ですよ!正義の為に、それを実行するのです。
 それが、なぜ許されないのですか。おかしいじゃありませんか!」
   戸燈、言い張り続ける。
   所田ら、すっかり困り果ててしまっている。

      ○科学警察・事務所

   光明寺が、机について、仕事をしている。
   そこへ、所田と清水が入ってくる。
清水「(怒って)な、何ですか!あの戸燈と言う男は」
所田「(笑って)まあ、そんなに怒るなよ」
清水「でもですねえ!腹が立つなあ。あの考え方、あの態度!」
所田「お前の入りたての時だって、あいつとそっくりだったぜ」
清水「(慌てて)よ、よして下さいよ!」
   二人が会話をしている最中に電話が掛かってきて、光明寺がそれを受けている。
光明寺「(受話器へ)はい、ちょっとお待ち下さい。
 (所田へ)所長、中村警部から連絡です。
 警官の死体の鑑識結果が出たと言ってますが、どうしますか」
所田「あ、今すぐ行くって、伝えといてくれ」

       (CM)

      ○警視庁・取調室

   暗くした中、所田と中村警部が机の上のデータを眺めている。
所田「(しかめっ面で)警部」
中村「何かね」
所田「この推定時間、どうも合点が行かないのですが」
中村「とは言っても、プロの鑑識家の割り出したデータだぞ」
所田「警官の発砲時刻が、二発続けてではない。かなり間があいている。
 しかも、二発目の発砲時刻は、警官の死亡時刻と重なっているじゃありませんか」
中村「別に、疑問を感じるほどの事ではないと思うがな。
 何なら、鑑識の担当者に問い合わせてみるかね」

      ○同・面会室

   所田と鑑識家が、向かい合って、座っている。
鑑識家「(口篭もって)実は、その点なのですが、私も多少困ったところなのです」
所田「と、言うと?」
鑑識家「その死亡時刻とぴったりと言うのは、ぎりぎりのラインなんですよ。
 もし、本当の二発目のピストルの発砲時刻を割り出すならば、
 それは警官の死亡以後の時刻にまで推定時間が伸びてしまうのです」
所田「(ギョッとして)え!」

      ○路地

   所田が、合点の行かぬ表情で、歩いている。

      ○科学警察・事務所

   所田、清水、光明寺が、それぞれの机について、仕事をしている。
   所田、考え込んでおり、ややボッとしている。
光明寺「(ふと)所長。どうしましたか」
所田「(ハッと)え、いや、何でもないよ」

      ○路地裏

   例の事件現場。
   所田がそこに立ち、じっと現場を眺めている。
所田の心の声「もしかすると、二発目のピストルの発砲でヤクザを撃ち殺したのは、
 警官からピストルをくすねた誰かなのかもしれない。
 でも、だとすれば、そいつは、
 死にかけていた警官の様子をじっと見ていて、見殺しにしたと言う事になる」

      ○回想

   路地裏の路上にて、死ぬ寸前でもがいている警官の姿を、
   何者かが笑みを浮かべて、眺めている。
所田の心の声「いや、そんな、まさか!普通の人間が、そんな事をするものか!」
   警官が息絶え、動かなくなった時、
   倒れていたヤクザの方がひょっこりと目を覚まし、上半身を起き上がらす。
   警官の死を見守っていた何者かは、警官の持っていたピストルにそっと手を伸ばす。
   そして、その銃口をヤクザの頭の方へと向ける。
ヤクザ「(ギョッとして)ひっ、バ、バカ、やめろよ!助けてくれ!」
   鋭い銃声!   (FO)

      ○木沢の部屋

   ピストルを持った木沢の手のみ、写る。
   その手は、ゆっくりとピストルに弾を詰める。
   不気味なBGM。

      ○橋の上

   所田が、手すりに寄りかかって、ぼんやりと川を眺めている。
   そこへ、不思議なムードの少女・エコが、ひょっこりとやって来る。
エコ「(所田を見て)おじさん、何やってんの?」
所田「(エコの方を振り向き)うん?」
エコ「川に飛び込むつもりだったら、止めといた方がいいよ。
 流れは緩やかだし、底もあまり深くない。水が汚いだけで、何のとりえも無し。
 飛び込み損になるよ」
所田「(きょとんとして)君、飛び込んだ事でもあるのかい」
エコ「(大笑いして)まさか!あたしだって、死に方ぐらい、選ばしてもらうよ」   (FO)

      ○科学警察・事務所

   所田、清水、光明寺がくつろいでいる。
   すると、外からドアをノックする者がいる。
所田「どうぞ」
   ドアを開けて、ノックしていた人物が入ってくる。戸燈である。
所田「(きょとんと)おや、君は」
戸燈「(やや沈み顔で)ご無沙汰してました。よろしいですか?」
   清水は、あからさまに嫌な表情をする。
所田「一体、どうしたんだい」
戸燈「どうしても、お話を聞いてもらいたかったんです。
 中村警部は相手にしてくれないので、科学警察の人なら分かって下さるだろうと思って」
清水「(意地悪く)紹介状は貰ってきたのかい。勝手には、ここには出入りできないんだぜ」
所田「(慌てて)まあ、せっかく来てくれたんだし、ちょっと休んでゆきなさい」
戸燈「じゃあ、お邪魔します」
   戸燈、つかつかと中に入ってくる。清水、すっかりとふて腐れている。
   戸燈、所田のデスクの前にある椅子に腰掛ける。
所田「(優しく、戸燈へ)何の話がしたかったんだい」
戸燈「(力強く)現在の警察制度は、絶対、改革すべきだと思うのです!」
所田「ほう、どのように?」
戸燈「まず、国民全体に完全な管理体制を敷きます。
 簡単に言ってしまえば、一人一人に発信機を付けちゃう訳なんですよね。
 その電波は、全て警視庁内にでも設置された巨大なコンピュータによって受信され、
 記録として、整理、保存されます。
 何か事件や問題が起こった場合は、全部、その記録を引き出せば、すぐに解明できる訳です」
所田「そりゃ、ちょっと不可能な話だね」
戸燈「なぜです?」
所田「前にも言ったように、プライバシーの問題がある。そこまでやる権利は、我々には無いよ」
戸燈「どうしてです!正義を貫く為には、何だって許されるはずではありませんか」
所田「大体、発信機を付ける事に対して、国民が拒んだら、どうするんだい?」
戸燈「強制的義務にします。生れた時に、体の中にでも埋め込んでしまえばいいのです」
清水「(思わず口を出し)そりゃ、人権無視どころか、もっと非人道的だよ!」
戸燈「なぜ、皆、そう同じ事を言うのです?僕の方が絶対正しいはずなんです。
 物理的にも不可能な話ではないんです」
所田「君の考え方はね、根本的なところで間違っているんだ」
戸燈「(不機嫌に)いいですよ、分かってもらえないのなら。
 せっかくの最高の犯罪対策だと言うのに」
   戸燈、ゆっくりと席から立つ。
戸燈「失礼しました」
   戸燈、礼をすると、さっさとこの部屋から出てゆく。
   同時に、所田と清水が、思わずため息をつく。
清水「(イライラと)何なんですか、あいつは!」
所田「完全な警備体制ねえ。彼にとっては、そう思えるんだよ」
   その時、所田のデスクの電話が鳴る。所田、すぐ受話器を取る。
所田「(受話器へ)はい、科学警察。
 え、なに!はい、分かりました!今すぐ、そちらへ向かいます」
   所田、電話を切る。
清水「(所田へ)どこからです?」
所田「(立ち上がり)清水、出動だ。
 事件が起きた。一人暮らしの老人が何者かに射殺されたそうだ」

      ○一軒家

   殺人現場。
   床の上に土足で上がった警官たちが、バタバタと現場調査をしている。
   その中には、中村警部、所田、清水も混ざっている。
中村「この家の老人が一人暮らしで、寝たきりである事を知っての犯行らしい。
 彼が寝ているうちに、家の中に侵入したらしく、一発で頭をぶち抜いて、殺している」
清水「(愕然と)ひどい事をするな」
所田「(中村へ)で、盗まれたものは?」
中村「今、部下たちに調べさせているが、今のところ見つかっていない」
所田「恨みや財産目当てによる犯行と言う線は?」
中村「その見方も薄い。何しろ、被害者は、身寄りの無い、貧しい寝たきり老人だったからね」
所田「(つぶやき)じゃあ、一体、何のために」
中村「実に計画的な犯行らしくてね、犯人は近所に人気の無くなる時間帯を知っていたらしい。
 目撃者は、全くのゼロだよ」
所田「(声を潜め)で、問題の凶器ですが・・・」
中村「老人の体に埋まっていた弾丸は、すぐ鑑識課の方へ出した。結果はじき出るよ」
所田「もし、それが警官から盗まれたものだったとしたら?」
中村「マ、事件が丸く収まるまでは、秘密にしておくさ」
所田「(窓の方を見て)洩れなければいいですけどね」
   窓の外には、集まった沢山のヤジ馬の姿が見える。   (FO)

      ○警視庁・取調室

   暗い。机を間において、中村警部と所田、清水が向かい合っている。
中村「(真剣な表情で)鑑識の結果が出たよ。
 あの弾丸は、間違いなく、警官から盗まれたピストルのものだそうだ」
所田「(呆然と)やっぱり!」
中村「どうやら、最悪の事態になってしまったみたいだな」
所田「あと、盗まれた弾丸は、どのくらい残っていますか」
中村「もし、全部盗まれていたのだとしたら、あと七発だ」
所田「(唖然と)七発!」
   所田、つい腕組みをして、考え込む。
中村「これ以上の被害は、どうしても避けねばならん」
所田「老人殺害の件の動機については分かりましたか?」
中村「そちらの方も、全く不明のままだ」
   所田、すっかり考え込む。

      ○橋の上

   また、所田がぼんやりと川を眺めている。
   すると、前の時と同じようにエコがやって来る。
エコ「(さりげなく)おじさん、まだ悩んでるの?」
所田「(エコの方を振り向き)おや、また君か」
エコ「(所田の横につき)悩むなんてバカみたいだよ。もっと、好きに生きてみたら?」
所田「(やさしく)まだ、君には分からないのかもしれないけど、
 社会とはね、それほど簡単に割り切れるようなものじゃないんだよ」
エコ「(妖しく微笑み)分かってるよ。人生なんて、本当は実につまらないものだからね」

       (CM)

      ○喫茶店

   所田とエコが、向かい合って、テーブルに座っている。
   テーブルの上には、ファーストフードが沢山。
エコ「(ファーストフードをパクつきながら)おじさん、ありがとう!
 これ、全部、おごってくれるの!あたし、今日、まだ何も食べてなかったんだ」
所田「(やさしく)確か、エコくんと言ったね」
エコ「本名は影子。でも、エコでいいよ」
所田「こんな昼間から町をうろついていて、学校は行かないでいいのかい」
エコ「去年、大学を卒業したばかり。そんなに子供っぽく見える?」
所田「(きょとんと)え?」
エコ「S大の人文科専攻。おじさんの大学は?」
所田「(口篭もり)S大?ボ、ボクは・・・」
エコ「(笑って)どうでもいい話か」
所田「じゃあ、今は何をやって暮らしているんだい?」
エコ「絵を描いてる。たまにバイトなんかしてさ」
所田「職にはついてないの?」
エコ「仕事なんてバカバカしいもんね。そのうち、おじさんの絵も描いてあげるよ」
所田「う、うん」

      ○科学警察・事務所

   所田が机について、考え事をしている。
   遠くの机には光明寺も座っていて、仕事をしている。
所田「(ふと)ねえ、光明寺くん」
光明寺「(つんと)何です、所長」
所田「確か、君、S大の短大卒だったよね」
光明寺「はい、そうですけど」
所田「確か、あそこはエリート大学だったよね」
光明寺「(ちょっと謙遜しながら)ええ、一応そう言われてますけど」
所田「今でもそうだよね」
光明寺「え、まあ」
   所田、また考え込んでしまう。   (FO)

      ○同

   部屋の中を暗くしている。
   所田、清水、光明寺の三人が、机の上に並べた数枚の写真を覗いている。
   写真には、沢山の人ごみが写っている。
所田「(ほほえみ)これは、警官の死体が発見された時、
 どっと集まったヤジ馬をこっそり撮影したものだ。
 犯罪者と言うのは、好奇心が強く、すぐ犯行現場へ戻ってきてしまう性癖がある」
清水「じゃあ、この中にピストルを盗んだ奴も混ざっているかもしれないと言うんですね」
所田「その通りだ」
   清水と光明寺、写真をじっと観察している。
   清水が、突然クスクスと笑い出す。
光明寺「どうしたの、清水くん」
清水「(含み笑いで)いや、ここに写っているおっさんの頭が、
 あまりにも見事に禿げ上がっているものだから」
光明寺「(ほほえみ)まあ、ひどい」
   と言うように、和やか。
   その時、所田、ふとハッとして、一枚の写真をバッと手に取り、ジッと見つめる。
清水「どうしました?所長」
所田「いや、ここに写っている男、老人殺しの事件現場にも見に来ていたような気がしてね」
   写真のアップ。所田が言っている男と言うのは、木沢である。
清水「(写真を覗きこみ)普通の男性じゃありませんか」
所田「確かにそうだが」
清水「二つの事件の発生場所は近所だから、
 同じヤジ馬が来ていても、おかしくはないと思いますけどね」
所田「(考え込み)うん」

      ○町中

   道行く人々に聞き込みをしている所田。

      ○会社・事務所

   周りで社員たちが仕事をしている中、
   所田とスーツ姿の中年男(木沢の上司)が立ち話をしている。
木沢の上司「(笑って)木沢くんですか。いやあ、とても立派な若者ですよ。
 よく働いてくれるし、素行も決しておかしくはない。
 無口で、ちょっと大人しすぎるところが欠点でしょうかねえ。
 学生時代も、なかなかの優等生だったみたいですよ。で、彼が、何か?」
所田「(口篭もり)いえ、大した事ではないんです」

      ○科学警察・事務所

   所田が、机に座って、すっかり考え込んでいる。
   そばでは、清水も机についている。
清水「(所田へ)所長、まだ、あの写真の男の事を考えているんですか」
所田「(ぼんやりと)うん、まあ」
清水「(うんざりと)また、所長の第六感ですか。いい加減、やめて下さいよ。
 我々は科学警察なんですよ。もっと、論理的な捜査をしましょうよ!」
所田「う、うん」

      ○警視庁・捜査課

   刑事たちが仕事でざわついている中、中村警部の姿も混ざっている。
   そこへ、所田がやって来て、中村のもとへ歩み寄る。
中村「(ポツンと)おや、所田くん」
所田「(中村へ)いかがです。あれから、事件の捜査の方は?」
中村「ちょっと、別の事件が発生してね。そっちの方に振り回されておったよ」
所田「一体、どんな事件です?」
中村「公園のベンチに爆薬が仕掛けられておった。人が座った途端、ボンだ。
 その人は大ケガを負ったが、下手すれば死んでいたかもしれない」
所田「(ギョッとして)犯人は?」
中村「さっぱり、見当がつかん」
所田「被害者に恨みを持つ者の犯行では?」
中村「いや、その線は薄い。どうも、無差別犯罪だったらしい。
 犯人としては、誰が被害に遭っても良かったと考えていたようだ。
 全く、困った事件だよ。一体、何で、こんな事をやらかすのやら。
 お陰で、こっちはずっと公園施設類の警備に当たっておったよ」
所田「(ふと)そう言えば、最近、戸燈くんの姿を見かけませんね」
中村「(不機嫌に)あいつだったら、辞めていったよ。
 どっちにしろ、いつかはクビにするつもりだった。
 どうも、この職業には向いてないようだったからね」
所田「そうですか」

      ○町中

   歩道で、木沢が誰かと話をしている。
   それを、車に乗った所田と清水が遠くから見張っている。
清水「(あっけらかんと)やっぱり、普通の男にしか見えませんけどね」
所田「(真剣に)一目見ただけでは、確かにそうだ。でも・・・」
清水「何です?」
所田「あの木沢って男には、どうも合点が行かないんだ。
 どのようにかは、うまく言えないんだが、何となく、もやっと」
   清水、呆れている。

      ○繁華街

   路上で、木沢の友人に所田が聞き込みをしている。
木沢の友人「(笑って)木沢ねえ。あいつとは、大学にいた頃、顔見知りだったけどね。
 あんまり付き合いは無かったけど、おとなしくて、マジメな奴だったぜ。
 悪い奴だとは思わなかったけどな。
 そう言えば、あいつ、サバイバルゲームに凝ってたっけ」
所田「(きょとんと)サバイバルゲーム?」

      ○土手

   何人かの迷彩服姿の男たちが、戦争ごっこをやっている。
   それを、傍で、所田と清水が眺めている。
清水「サバイバルゲームと言うのは、要するに、大人の戦争ごっこですね。
 大人が、きちんとした道具を揃えて、子供みたく戦争ごっこを楽しんでいると言えば、
 一番正しい言い方なのでしょうかね。
 ま、いい年をして、こんな遊びをして、本当に楽しいのかどうかは、
 僕には、今ひとつ、分かりませんけどね」
   所田は、じっと、男たちのやりとりを見続けている。

      ○おもちゃ屋

   所田が、店の主人に聞き込みをしている。
店の主人「確かに、木沢くんは、うちで主催しているサバイバルゲームの会員です。
 でも、最近はすっかり姿を見かけませんね。
 マジメな人で、以前なら、一度も休まずに、定例のゲーム会に参加していましたけど。
 ゲームをしていても、目立たない方でしたね」

      ○橋の上

   また、所田がボッと川を眺めている。
   すると、申し合わせたかのように、エコがやって来る。
エコ「(所田の横につき)おじさん、また悩んでるの」
所田「(エコの方を振り向き)あ、エコくん」
エコ「よしなよ、バカバカしい。たかが、こんな人生で、悩み事をするなんて」
所田「でもね」
エコ「どうせ、皆、いつかは死ぬんだよ。悩んでる時間がムダだよ」
所田「人生、時には悩む事だって必要さ」
エコ「人生なんて、ちっぽけなものに過ぎないよ」
所田「君は、どうも、考え方がニヒリズム的みたいだね。
 生きてゆく事に、あまり興味が無いような」
エコ「結局、最後は死んじゃうんだからね」
所田「死ぬ事が怖くないのかい」
エコ「(笑って)死んでみせようか」
所田「(きょとんと)え」
   エコ、靴を脱ぐと、橋の手すりの上へと登り始める。
   所田、ギョッとして、慌てて止めに入る。
所田「(本気で)バカ!よすんだ!何て事を!」
   所田、エコの体に抱きつき、橋の上へと落とす。
   エコ、きょとんとして、所田の顔を見つめる。と、大笑いしだす。
エコ「(笑って)バカねえ!本当に死ぬと思ったの?嘘よ、冗談に決まってるじゃない」
   呆然としている所田の前で、エコが笑い続ける。

      ○町中

   所田とエコが、並んで、歩道を歩いている。
   と、バッタリ私服の光明寺と出くわす。両者、ハッと立ち止まる。
所田「(きょとんと)おや、光明寺くん」
光明寺「(ほほえみ)あら、今日は、所長」
所田「今日は、休みをとったと思ったら、ショッピングかい」
光明寺「そういう所長こそ、仕事中にデートですか」
所田「(口篭もり)いや、この子は・・・。紹介しておくよ。エコくんだ」
エコ「(笑って)よろしく」

      ○公園

   所田が、のんびりとベンチに座っている。
   と、向こうから、光明寺とエコが、楽しげに、歩いて、やって来る。
   二人、所田のもとまで来る。
エコ「(所田へ)じゃあ、あたしは、今日はこの辺で失礼するから」
   エコ、手を振って、走り去ってゆく。
   光明寺は、所田の横にちょこんと座る。
所田「(光明寺へ)さすが、社交家の光明寺くん。
 もう、すっかり仲良しになってしまったみたいだね」
光明寺「(ほほえみ)ええ、まあ」
所田「どうだい、あの子?」
光明寺「ネは素直で、不思議な魅力を持っているんだけど、でも・・・」
所田「でも?」
光明寺「よく分かんないんだけど、ちょっと変わってる感じ。
 まるで、別の世界の住民のような。
 最初、それはあの子の持っている淋しさなのかと思ったんだけど、そうでもないみたい」
   所田、つい腕を組み、考えにふける。

      ○科学警察・事務所

   所田、清水、光明寺が机について、仕事をしている。
   と、光明寺の机の電話が鳴る。光明寺、落ち着いて、受話器を取る。
光明寺「(受話器へ)はい、こちら、科学警察」
   光明寺、口をつぐむ。しばらく、その状態が続き、やがて、彼女は電話を切ってしまう。
所田「(きょとんと)どこから?」
光明寺「(そっけなく)いたずら電話です。何も喋りかけてこないんです。
 最近、多いんです、こういうのが」
所田「(ぼんやりと)ああ、そう」
   三人、またそれぞれ仕事を始める。
   すると、今度は所田の机の上の電話が鳴り始める。
   三人、顔を見合わせ、苦笑いする。所田、受話器を取る。
所田「(受話器へ)はい、科学警察。
 (次の瞬間、ハッとして)え!フードショップに、銃を持った強盗が乱入!
 分かりました、すぐそちらへ行きます!」

       (CM)

      ○フードショップ前

   中村警部ひきいる警官隊がフードショップを取り囲んでいる。
   さらに、ヤジ馬も沢山集まっている。
   所田と清水が、中村のもとへとやって来る。
所田「(中村へ)様子は?」
中村「犯人は、店の中にと立て篭もった。人質はいないし、今のところ負傷者も出ていないよ」
所田「銃の方は?」
中村「犯人を捕まえてみなくちゃ、まだ機種の方は分からんよ」
所田「そうですか」
   所田、ふとヤジ馬の方へ目をやる。その中に、エコの姿を見つけ、ハッとする。
所田「(エコの方へ歩み寄り)エコくんじゃないか!危ないよ、こんな所に来たら」
エコ「(ほほえみ)何で、店の中に強行侵入しないのさ」
所田「無意味に被害者を出す訳にはいかない」
エコ「そんな事言ってたら、いつまでたっても犯人は捕まえられないよ」
所田「いいから、君は早くうちに帰りなさい」
   所田、中村らのもとへと戻る。
   またフードショップの方を見守るが、やがて、チラリとヤジ馬の方へ目をやる。
   エコの姿がない。
所田「(つぶやき)あれ、あの子・・・」

      ○フードショップ内

   レジ台の影で、銃を持った男(犯人)が、ガクガクと震えている。
   と、裏口からこっそりとエコが忍び入ってくる。
エコ「(楽しげに)犯人さん、出てらっしゃい!
 どうせ、いつかは捕まっちゃうのよ。抵抗するだけムダよ!」
   エコ、レジの方へと接近する。
犯人「(震えながら)く、来るな!本当に撃つぞ!」
エコ「(ほほえみ)そっちね。バカね、さあ、姿を見せなさいよ。捕まるなら、今よ」
犯人「(大声で)撃つぞ!いいのか!いいのか!」
エコ「(にっこりと)さあ!」

      ○フードショップ前

   フードショップから銃声が聞こえてくる。
   取り囲んでいた所田、警官たちは、ハッとする。
所田「(慌てて)しまった!」
   彼らは、ワッとフードショップの方へと走り向かう。

      ○フードショップ内

   凶弾を受け、胸を赤く染めたエコが倒れている。
   そのそばで、体を丸めた犯人がガクガク震えて、泣いている。
   そこへ、所田や警官たちがドッと押し入ってくる。
   所田、ハッとして、すぐエコを抱きかかえる。
所田「(必死に)エコくん!大丈夫か!しっかりしろ」
   エコは死んではおらず、とても楽しそうな笑みを、所田に対して、浮かべてみせる。
   所田は、それを見て、思わず驚愕する。
   エコ、そして失神する。
   一方、犯人は泣きわめき続けている。
犯人「(泣いて)オレが悪かった!許してくれ!殺す気はなかったんだ!お願いだ!」
   彼の周りをドッと警官たちが取り囲み、逮捕してしまう。
   その有り様を、所田がボッと見つめている。   (FO)

      ○警視庁・取調室  (夜)

   所田と中村警部が、向かい合って、立っている。
中村「フードショップに強盗に入った男の持っていた銃は、ただの改造モデルガンだった。
 改造とは言っても、毛の生えた程度のものでね、人に当たっても、大したケガはしないよ。
 その事を、取り調べの時に教えてやると、犯人の奴はホッとしておったよ」
所田「そうですか」
   所田、部屋から出てゆこうとする。
中村「どこへ行くのかね。(ハッとして)ああ、被害者の少女のところか」
   所田、ドアを開けて、出てゆく。

      ○病院・廊下  (夜)

   所田が医者と立ち話をしている。
医者「(にっこりと)ほんのかすり傷でしたよ。乳房にわずか傷がついただけ。
 私は、万一の事を考えて、入院を勧めたのですが、さっさと帰ってしまいました」
所田「彼女、何か言ってましたか」
医者「君が来たら、さよならを代わりに言っといてくれと」
   それだけ言うと、医者は会釈をして、去ってゆく。
   所田は、しばらくボッとつっ立っている。
   すると、今度は、中村警部が慌ててやって来る。所田、そちらを見る。
中村「(せかせかと)所田くん、今度こそ、警官からピストルを盗んだ犯人が見つかったよ。
 一緒について来てくれないか」

      ○パトカー内  (夜)

   パトカーが、現場向かって走っている。
   その後部座席で、所田と中村が話をしている。
中村「犯人は木沢と言う青年だ」
所田「(落ち着いて)やっぱり」
中村「彼の部屋に、盗難ピストルがあるのを、アパートの管理人が発見したんだ。
 その管理人が、けっこう銃には詳しくてね、すぐ気付いたらしい。
 彼が警察にこっそり通報している最中に、木沢には逃げられた。
 その際、アパートの住民が一人撃たれている」
所田「木沢はどちらへ?」
中村「あの警官が死んでいた裏路地だ」
所田「犯人は犯行現場へ帰る、と言うアレですか」
中村「うむ。どうも、そうらしい」

      ○裏路地  (夜)

   コンクリート塀に囲まれた路地の奥の方を、警官たちが包囲している。清水もいる。
   そこへ、所田と中村が走って、やって来る。
警官A「(中村へ)あ、警部!」
中村「木沢の様子はどうかね」
警官A「袋小路に逃げ込みました。もう逃げれっこありません。人質もいません」
中村「ピストルはまだ持っておるんだね」
警官A「はあ」
中村「強行逮捕は避けた方がいいな。
 先のフードショップ強盗のように、気の動転した犯人に撃たれる恐れがある」
所田「ピストルの弾は、まだ五発以上、残ってる訳ですね」
中村「そうなる」
   所田、腕を組んで、考え込む。
   中村にメガホンが手渡される。
中村「(メガホンを使って)木沢くん、出てきなさい!
 自首するならば、罪はだいぶ軽くなるのだよ」
   しかし、奥の方でよく見えない袋小路の方からは、何の返事も返ってこない。
   皆が弱り果てていると、一人の警官が一人の女を連れてくる。あの木沢の恋人である。
恋人「(焦って)警部さん!すみません!私に説得をやらせて下さい」
中村「(恋人に)君は?」
恋人「木沢の友人です」
警官B「恋人なんだそうです。婚約もしているそうです」
恋人「彼、きっと頭が混乱しているんだと思うんです。
 私に対してなら、素直になってくれるはずです。お願いします!」
中村「ほう!そりゃ、都合が良かった」
恋人「じゃあ、行かせてくれるんですね!」
中村「もし、身に危険を感じたら、すぐ逃げ出してくるんだよ」
恋人「(ほほえみ)まさか。彼が、私にピストルの先を向けるなんて」
   恋人、さっそく、袋小路向かって、歩き出す。
恋人「(落ち着いて)ねえ、木沢くん!私よ!分かるわよね。
 何で、こんなバカな事をしたの。さあ、出てらっしゃい。
 来ないのなら、私の方から行くから!私にだったら、何でも話してくれるでしょう」
   恋人の姿が袋小路の奥へと見えなくなってゆく。
   沈黙し、ハラハラしながら、見守っている一同。
   その時、銃声が!
恋人の声「(叫び)キャーッ!」
   一同、ギョッとする。
所田「(愕然と)何てこった!」
中村「待て、今飛び掛ってゆけば、皆、撃たれてしまうかもしれない。
 奴は、サバイバルゲームをやっていたと言うから、射撃の腕はかなりのものなのだろう」
警官C「(慌てて)じゃあ、どうすればいいんですか!」
所田「(ふと)白旗を持って、奴に近付いてみたら」
中村「(きょとんと)え」
所田「意外と奴は油断するかもしれませんよ」
中村「しかしだね」
所田「僕が提案したのだから、僕が実行してみます」
中村「いや、大切な君の身に、もしもの事があったら、困る」
   中村、警官たちに合図をする。何人かの警官が白旗を持つ。
中村「(大声で)おーい、木沢くん!私たちは降参するよ!」
   白旗を持った警官たちが、袋小路へと向かってゆく。やがて、その姿が見えなくなる。
   たちまち、乱闘している音が聞こえてくる。一同、ハッとする。
警官の声「(勇んで)やったあ!捕まえたぞ!」
中村「い、今だ!」
   さらに何人もの警官が袋小路へと走り向かってゆく。
中村「(唖然と)これは、一体、どういう事なんだ」
所田「(つぶやき)まさか、こんなにうまくゆくとは」
清水「(所田のそばへ寄り添い)所長、これは?」
   所田、答えない。
   やがて、袋小路から、警官に連れられた木沢が出てくる。
   木沢は、顔を奇妙な形に歪めて、笑っている!ストップ・モーション!効果音!
   それを見た所田や清水は、愕然とする!
   木沢は、すぐパトカーの中に入れられてしまう。パトカーは走り出す。
   中村が指揮を執っている。
   所田と清水は、すっかりと呆然と立ち尽くしている。
所田「(つぶやき)あの男は、ルナテックだったんだ。
 数千人に一人の割合で存在し、社会の中にひっそりと紛れ込んでいると言う、影の人種・・・」
   所田と清水、立ち尽くし続ける。
   そのまま、END。